犬小屋という名の倉庫

主にうごメモ、写真を乗っけるように使います。主に使うブログはこっちじゃないです。

老魔術師のお戯れ 下

「おお、やったぞ!どうやら成功したようだわい!」

「せ…セルリアアアアアアアン!!」

なったらなったでオカンの熱い愛の雄叫びである。しかし魔術に対する興奮もあるようで、どっちを優先しようか悩んだ挙げ句大切な人の安否が優先された、って感じだ。

…まあ、興奮まじりなせいで顔を赤くし笑顔だからなんか、カエルになったセルリアンを笑っている用にも見える。

言いそびれていたが、レグホンはやたらセルリアンに肩入れをする。恋愛というより、親が子供を心配するそれに激しく似ている。本人は親友のような関係だと言うが、どう見てもオカンと娘である。

「…セルリアンさん、ですか?」

「げこ、げこげこ!!」

いえすいえす、と必死にこくこく頷いてみせる。気持ち頷いてる程度かなという感じだが、本人が必死すぎるせいで伝わってくるものがある。

「すっげー!変身したすっげー!!」

約一名ほど、何やら目を輝かせて間違った方向にときめいている脳筋もいるが。残りの人はというと、ドン引きしているテラコッタ、ゲラゲラ笑い飛ばしているシャトルーズ、ただオロオロ困っているカナリアだった。

「いーなー変身かっこいい!セルリアンいーなーいーなー!」

「…カエルだよ?」

どうも、変身というそれにときめきを覚えるようだ。何か違うものに姿を変える、それが叶えば何でもいいのだろう。ニチアサファンでも流石にこればっかりは同意しかねる。

「うむ、儂は満足だ。協力に感謝するぞ、お主ら。これは約束の報酬だ。」

そう言うと、魔術師はアミュレットを、一体この場で誰に渡せばいいのか数秒固まったが、一番近くにいたし一番興味を持ってくれたということでレグホンに手渡された。

「あぁ、それとそこの冒険者を元に戻す方法だがの…

人間が接吻すれば元通りになるぞ。」

「……」

「……」

流石に、全員絶句。

「…もう一回お願いしていいかしら。」

「だから接吻――口づけで元に戻ると言ったのだ。古来、口づけには単なる愛情表現の他に、魂を分かちあうとか魔を断ち切るといった意味合いが含まれていたのだよ。今じゃ童話くらいでしか聞かぬ話だがね。」

「魂を…分かち…」

あ、これはもう一人くらい壊れる人がでてきそうな予感が。

「それとだ、口づける相手は童話のように、愛する相手や異性である必要はないぞ。それでは、協力まことに感謝する。」

そう言って、老人は満足そうに立ち去っていった。…その老人は思ったのだろう、これだけ告げれば、もうこの後誰かが口づけをし、無事にあの不憫な少女も死なずに済むだろうと。

それは、あまりにも甘かった。むしろここからが、彼女の不憫伝説の始まりだったのだ。


「……誰、でも…?」

「……チラ」

テラコッタがレグホンの方を見る。俯いて、ふるふる震えている。大体の予想はつくけど、ついてほしくないっていうのが本音だけど、これはきっと、

「…ンアアアアアァアアアアアアアアアアアアアアアァアアアア!!!!」

やっぱりだ、やっぱり愛のほうこう本日二回目である。

「れ、レグっちおちつ

「セルリアンと接吻!?せせせ接吻よ!?どうするの誰でもいいってことは私や親父さんでもいいってことよねうわああああんこれ私どうしたらいいのぉおおおおお!!」

「落ち着ついてよもー。ほら、完全セルリアンがおいてけぼり食らってるよー?」

そう言って、椅子の上にちょこんと座っているカエル、基不憫リーダーに目を配るように顔をくいっと動かして示唆する。その姿はあぁ、今日も貧乏くじか、と哀愁漂うリーダーのオーラがにじみ出ていた。

衣服はただいま絶賛レグホンが持っている。それはもう大事にホールディングしているので、落とすことはまーないだろう。

「…あああぁっ!!」

「ど、どうしました!?」

「セルリアン今裸体じゃないっ!!」

…いや、まぁ、カエルだからしょーがないんじゃないかなぁ?

と、そんなツッコミを入れられるのは最早テラコッタしかいない。が、何かもう色々関わりたくなくなってきたテラコッタは、そっとその言葉を心の中へと仕舞い込んだ。

「いーじゃねーかーセルリアンなんだし!」

「げこぉっ!?」

「ダメよ!仮にも花の乙女よ18歳よ!やっとお風呂一人で入れるようになって、一人で夜眠れるようになって、そんな子が裸で宿の見せ物なんて耐えられないわ!児童ポノレノで訴えられるわっていうかそんなことさせないしさせるつもりもないわだってだってだってそんな

「はいはい黙ってもう親父さんに解決してもらうよ?」

「げこ!?!?」

「ダメェエエエエエ!!」

流石にイラァッ☆と来たらしい親指を立て、ビッとグーを180°回転させる。そのまま唾をべっと吐き捨てて宿の床に落とすものだから、親父さんもこれには顔をしかめる…状況が状況なので黙っているが。

「…今何で親父さんを引き合いに出したんです?」

「え、もう面倒くさくなったら親父さんに全部解決してもりゃ早くね?って思って。あ、そのときは親父さんよろしく!」

「げこ、げこげこぉ!!」

「まぁ、ワシは構わんが…」

「やめたげてよぉ!!」

バンッと立ち上がって必死に抗議するレグホン。半分くらい涙目になっているような気がした。

「うーん?とりあえず、殴れば解決?」

「しないからぁ!!まずはそうね…裸という醜態をさらし続けるこの可哀想な状況を何とかするのよ!」

「いや接吻しよーよ。」

ぶっちゃけチュウしてしまえば全てが終わる。ただ、それ以上に耐えられない何かが彼女にはある、ほんっとただそれだけがこの状況をややこしくしている。

「レグホンさん考えました!こうやって、私の手の上にセルリアンさん置いて、私の服の袖を乗せてしまえば!」

「でかしたわ!よし、とりあえずはそれでいきましょう!」

「……」

セルリアン的には、布越しだから大丈夫とはいえオート死の接触ハンドに挟まれて、布の重みが微妙につらいこの現状よりかは、素直に椅子の上に置いていてほしいというのが本音だった。

「じゃあ次は私が『翻訳』の術式込めたリボン作るから、それまで

「そーゆーのもういいから。セルりんの意志なんか片っ端から無視したらいーんだって!」

「それは余りにも可哀想よ!」

「目を離したスキに焼きカエルにしてても文句はないな?」

「……」

ニヤリ、と笑う。彼女に対しての脅しというより、単純にそこのカエルを燃やしたいというその願望の現れには違いないのだが、いかんせん彼女が言うとただの脅しかいじめの言葉にしか聞こえない。

「…で、どすんの?誰がする?あ、いっとっけどボクはパスね?何が悲しくってセルりんと口づけなんてしなきゃいけないのそれだったら死んだ方がマシ一生の恥。」

「それな。激しく同意するぜ。」

「げこぉおおおお!!」

そこまで言うか、私が何をした、とでも言ったのだろう。ニタァと笑って、べぇっつにぃ?と、込められるだけ込めた悪意でとても悪い人の顔を作った。どこぞの青い神様に対になっている赤い神様もびっくりだ。

「というわけだ、ここは親父にちょっくら一発

「許さないわ、私が。」

スタッフを持ち、ニッコリ微笑む。流石にこうなってくると本格的にヤヴァイので、シャトルーズもおーこわいこわいとひっこむ。彼女の愛に敵う人はそーおらんのちゃうかな?

「そんな真っ向に否定することないだろう…ワシだって傷つくのだぞ?」

「初めてが親父さんとか一生立ち直れなくなるわ!仲間内なら皆女子!女の子補正でなかったことにできるわ!!」

「そーなのか?」

「知らないしボクに聞かないでよ。」

年齢を無視すれば可愛らしい首を傾げる仕草。その一言に、吐き捨てるようにテラコッタがきつく返す。女の子補正があっても、白い花が咲き乱れる世界ではカウントされることは今は無視するらしい。

「ていうかだったらさ、レグホンがチュウしたら問題ないんじゃないか?」

「うん全く持ってその通りすぎるね。」

「わ、私が…?」

「逆になんでその発想がないんだよ。」

考えれば当然である。セルリアンラブな彼女が何故しようとしないのか。さっきの魂がうんたらっていうのでも気にしてるのか。でもそれなら余計にワカチアイーしてはしゃぐオツジョがここに誕生しても何ら不思議ではないような。

が、彼女にも何か思うところがあるらしい。急に赤面して、頬に手を当てて俯く。

「い、いやだって、だってファーストよ?わ、私なんかがそのっていうかあの、初めてをセルリアンに捧げるそれが神に許される行為なのかって考えるとでもでもそりゃ私がしたいっていうかできればしたいし大好きなセルリアンのためっていうことでその唇がゲットできるのならそれはステキすぎることこの上ないんだけどでもでも

「はよやれ。」

一番平和解決な気しかしない。一名ほど、えーそこは親父の出番だろーと、残念がってる残念な秀麗がいるがそれはそれで。というか女の子補正が効くのではないのか。

ほら早く、と仲間の声でレグホンはカナリアの袖にくるまれているカエルもといセルリアンににじりよる。セルリアン的にはもう何でもいいから早く直して、というのが本音なのだが、そこはカエル、げこげこしか言えない。しかし黙って仲間たちの行く末を見届けようとする姿勢は、どことなく漢を感じる女だけど。

「…せ、セルリアン…ごめん、私なんかが…!」

「げこ。」

いいから早くして。その意味のげこが、一体彼女にどう捉えられたのか。赤面し、ひたすらに目線を合わせようとしない。合わせる必要性は何一つないと言えばないのだが。

「…い、いい?ホントにいい?」

「よぉーし!レグホンのためにコールを!ほーらいっき!いっき!!」

背後から主にサデスティック魔法使いと思われるコールのスタート。それに便乗してか、脳筋も楽しそうにいっき!いっき!のコール。その中に混じる、すっごいテキトーな拍手もあったりなかったり。

それが追い打ちをかけ、余計に顔が赤くなる。ぷるぷるしながらちょっとずつ、ちょっとずつ近づいていく。もういーから早くして?というセルリアンの意志をガン無視なところ、彼女も意志をくみ取る気ないのではなかろうか。

唇と唇がついに残り5センチほどになる。仲間の声援という名の嫌がらせもヒートアップしてきたころ、彼女はいっきに動いた。

「…やっぱムリィイイイイイ!!」

乙女のビンタ炸裂!極限にまで恥じらいという名のためにためた力を一気に解放し、理不尽な暴力がセルリアンを襲う!

「ゴッ」

ベチコォオオオンといい音の刹那、レグホンからいただいた加速度そのままで地面に叩きつけられ、ベシャァアアアアというあんまりな効果音が部屋に響きわたる。嫌な音がしていないところが不幸中の幸いか。セルリアンがカエルでなければ死んでいた。

「たーまやー、えらくぶっとばしたなぁ。」

「むっ、無理、私には無理よ!!やっぱり私なんかが神々に認められし神聖な唇を奪うことなんて無礼極まりないわできないのぉおおおお!!うわぁああああんごめんね、ごめんねセルリアン、私何の役にも立てなくてっ!!私ダメな女!ちょっと唇一つ重ねるだけで助けられるっていうのにそれができないなんてぇええええええ!!」

「その神聖な唇に結構ヒドイことしてるのはスルーなんだね?」

わんわん泣き出しているが、実際この場で一番泣きたいのはセルリアンだと思う。体を張って実験台になり、直してもらえるかと思いきや痛み倍増のビンタをいただき、挙げ句に地面に叩きつけられ生死をさまよう旅に出ようとしていたのだから。

 


そんなセルリアンは後ほど落ち着いたレグホンの手によって癒身の法をかけてもらい、一命をとりとめたのであった。

「…本当にごめんね…痛かったでしょう…?」

「げこ。」

気にするな、慣れている。その意味を込めたげこの一言は、とても重たい響きがあった。

そんなこんなで始まる第二ラウンド。一番平和解決と思ったレグホンは、意外と地雷の密集地帯であった。

「よかったね、セルリアンで。これがカナちゃんとかだったら罪悪感沸くよ。」

「それはあなたたちだけよ!私はそんな、彼女に酷いことできないわ!」

「したよな、ついさっき。」

「……」

シャトルーズの一言が言い返せず、しゅんと縮こまる。もういいよ、私は大丈夫だから。その男前な一言は、やはりげこげこという鳴き声だった。

因みに今は再びカナリアの袖の中に収まっている。やはりその辺は譲れないらしい。

「…で。親父さんの出番か。よっしゃあいけっ!君に決めた!」

「しないしません許しません。花の乙女の心を枯らす魔の一口、絶対にそれだけは阻止するわ。」

「どこぞの電気ネズミのようにピッカピカってかやかましいわ。」

普段ならハゲと言った者には裁きを、がモットーな親父さんだが、流石にここで制裁を下そうとなるとセルリアン放置プレイ問答無用になる気しかせず、そっと飲み込む。意外とこの親父は寛大であった。

「あのー…よければ、私がリーダーを助けるお手伝いをしますよ?」

おずおずと手を…上げれないので、控えめにカナリアが主張する。そういえばいた、完全盲点だった。というか、セルリアンの服で完結させていてすっかりその選択肢を忘れていた。

確かに彼女はリーダーと親しいし、性格も丸くて優しい。ほんとだ、多分一番の回答はこの子だったよ、何で忘れてたんだ。

「……ほんっとだ、なぁんでこんな可愛い子ちゃん忘れてたんだろうなぁーセルリアンよぉ。」

「げここ、げこ。」

この場で私に決定権はどーせないだろ、お前らが忘れてただけだろ。と、鋭いツッコミを入れても届かない。げとこしか伝えられない、何とも哀れかな。

「それじゃ、カナリアさんや、ちょちょっとお願いするぜ。」

「…そうね、カナリアなら――」

いいわ、とレグホンもオカンの認めをくだそうとしてハッと気がつく。

接触したか弱い者を死へと追いやる能力。発動させたくなくてもさせてしまう、亡霊のその呪われた力。

レイスのような死の接触ほど強力なものではなく、冒険者として鍛えられていれば悪影響を及ぼすだけで何とかなる場合が多い。が、今は、セルリアンは弱肉強食の中間やや下に君臨するカエルなのだ。

「…ストォップゥウウウウウウ!!」

ボグシャァアアアッと、再びインするオカンビンタ!口づける前に袖の中のカナリアの手にヒットし、揺れることでカエルがその中からポロリと落とすことによって、唇と唇の接触を回避することに成功した。

まあ、セルリアンは再び痛い目に遭うことになったが。今回はまだ自由落下による加速度しかないから、痛いけどさっきよりマシ。セルリアンでも死んでいたからまだまだマシ。

「ちぇっ、レグホン気づいちゃったかー。」

「絶対ここで息の根止めといた方がよかったって。」

「よくないわよ!早死もいいところっていうか!あなたたち気づいてたのなら言いなさいよあやうく南無三するところだったじゃないの!!」

それでよかったのにー、と残念そうな顔になる二人。で、まあ脳筋は相変わらずナンノコッチャ状態で目を点にしてにっこりしている。

「うわあああああセルリアンさんごめんなさいいいいいいい!!わざとじゃなかったんです、もし私がセルリアンさん助けれたらいいなって!それだけ!それだけだったんですうわあああああんわあああああん!!」

カナリアもすっかり忘れていたらしく思わず泣き出し、直接触れないように手で抱え込みわんわん声を出して涙をこぼす。彼女はとても嘘をつくような性格ではないので、これは本心からの涙だ。

その涙はセルリアンにいくつも落ちる。それでぺかーっと光って元に戻ったらイーハナシダナーなのだが、残念ながらそんな奇跡はここでは起きない。

「はいじゃあ次、親父さーん。」

「却下…でも、あと頼める人と言えば…」

ちらり、視線を向ける。その先には、薄紫のポニーテールの大人に見るには厳しい大人が一名。

そしてどういうことか分かってないというような表情。最早お約束レベルだ。

「…あたし?」

「以外に誰がいるのよ。」

レグホンは崇高すぎて手が出ず、カナリアは亡霊なので昇天させてしまい、テラコッタとシャトルーズは汚らわしい嫌だ、となるともう、ウィスタリアしか残っていない。

というか、ある意味適任じゃないだろうか。やったことを忘れてそもそもそんなもの無かった、ということで落ち着きそうだ。

「…で、何すればいいんだ?殴るのか?」

「さあ、行け、己のうなる拳に名をかけて!」

「殴ったら蜘蛛の糸で1時間ほど頭を下にして縛り付けるわね?」

洒落に聞こえないのが怖い。

「もう面倒だから単刀直入に。カエルにキスれ。」

まあ簡単なご説明、これならサルでも理解できる。経緯は分からずとも、何を求められ、どうすればいいのか。それはとりあえず、理由は分からなくても分かった。

「ん、いいぞ!任せろ!」

あぁ、やっと終わる。やっとこの、わけも分からずズルズル呪い解除に手間取っていた現実から解放される。

もうこの際誰でもいい。どうせ女子だし、これから私には男なんてできる未来などない。親父さん以外ならもう、この場の誰でもいいやむしろお願いします、直して。

…そのセルリアンの、『誰でも』という考えは今すぐ後悔させられることになった。

「じゃ、ちょっと借りるな!」

「あ」

そうだ、彼女は何故カナリアの袖の中に居たかを分かっていない。

それはいい。それはいいけど、分かっていた方が確実によかった。

「ゲボッ」

メキャアッと、明らか嫌な音が。


あぁ、こいつ。

 

…握りしめた…!


「じゃあいっくぞカエル!」

ちゅっ…という、可愛い効果音ではなく、もっと豪快な何か別のものを彷彿とさせられるような、そんな接吻の音が聞こえる。

それは、あまりにも擬音語にするには生々しすぎたので、ここでは割愛しておく。

とまあ、そんなこんなで、再び変身したときと同じような現象が起こり、セルリアンは無事、人の体へと戻ったのであった。

「おーセルリアンだ!すっげぇ、戻った戻った!」

刹那、彼女はその場へ倒れる。先ほど握りつぶされたので完全KOとなり、むしろ生きている方が不思議であった。

勿論、全裸である。

「って、あっれーセルリアン?おーい起きろー、そんなところで全裸で寝てたら風邪引くぞー?」

「あっはははは!これは傑作だ、女体盛りが地面にできてるあっははははははは!!」

間違った方向に心配する脳筋と、ゲラゲラ笑って腹筋崩壊させる魔法使い。

唯一の頼みの綱は、

「…セルリアンの…らたっ…ああ、わ、私なんかが…私なんかが…ぁあああああんっ!!」

しばらく震え、恐れおののきながら、しかしどこか恍惚で幸せそうな笑みを浮かべながら同様に倒れていった。

「あ、あわわわわわセルリアンさん!レグホンさん!しっかりしてください!!て、テラコッタさん、二人を助けて――」

そっと、彼女の居た方に目をやって気がつく。そこには、一枚のメモが。

『オチが読める。逃げるから探さないでね☆』

「…あああああんどうしましょうどうしましょうどうしましょぉおおおおおお!!」

「お、おいお前!ワシはレグホンを運ぶから、セルリアンを運んでくれ!」

「え、ええお父さん分かったわ!」

「うわぁああああん私亡霊だから下手に手を出せないうわあぁあああああんうわぁあああああん!!」

「お、落ち着け、カナリアほら落ち着けええええええ!!」

阿鼻叫喚。彩華が居るこの宿、『煌々亭(こうこうてい)』に少女の鳴き声と女性の笑い声が高らかに響きわたり、近所迷惑を働くのでした。

 

ちなみにその混沌とした事態は、レグホンさんがセルリアンの危機を感じ取り、リバイブしてオカンパワー零式で死の淵からおかえりなさいしたというが、今や伝説となり、親父と娘さんの記憶の中だけで語られている。

 

 

あとがき。
周摩さんからリクエストを受け取って、こいつらで『老魔術師のお戯れ』のリプレイでした!
やばいね、予想以上にうちのパーティ病気だわ!!


著作権表記。
シナリオ:老魔術師のお戯れ 丸平お園様