犬小屋という名の倉庫

主にうごメモ、写真を乗っけるように使います。主に使うブログはこっちじゃないです。

東方リプレイ1-1 『緋の風が妖しく輝き』

役目だから。その言葉に縛られて、自分を殺して。


何度焦がれたか。自分の定めに縛られない生き方に。


しかし、鎖で縛られたかのように、自分が望む外に逃げることはできなくて。


…天命に逆らうことなど、出来やしない。

 

ー『緋の風が妖しく輝き』ー

 

「というわけでやってきましたアレトゥーザ!毎度おなじみ、東風谷早苗が海の模様をお送りいたします!いやぁ何度みても綺麗な海ですねーこのまま泳ぎに全裸になりたいですよ!」

「…早苗。現実逃避は見苦しいよ?」

アレトゥーザという、海が主要となっている美しい街で、二人のリューンの冒険者の東風谷早苗秋穣子が浜辺にやってきていた。

早苗は美しい緑色の長い髪の毛に、長身でスタイルはとても良く、白と青の巫女の服をしている。名前からしても東の国の出身だということが分かる。

穣子の方もこれまた東の国出身。金髪で幼く身長も低い、まだまだ子供だった。赤いエプロンに黒いスカート、また葡萄のついた帽子を被っており、見た目がとても秋色である。

というのも、彼女は豊穣の神であり、秋に関する穀物を担当している。周りには隠しているので、基本的には人間という種族で通している。

因みに神といっても力はごくごく小さい。八百万の神なんてそんなものらしい(その中でもかなりの下位に入るそうだ)。

「…だって、ただの食材探しよ?冒険者が食材探しよ?もっとこう、派手な仕事がしたいじゃない!」

「駆け出し冒険者なんだから、荒事は全部先輩達に任せてりゃいいよ。そもそもまだあたし達は二人しかいないんだし、無理っしょ。」

この二人はリューンのある有名な冒険者にお世話になっている。そろそろ独立してチームを作ってもいいだろうということで、仲間集めを地味に行っていた。

…今回はその先輩冒険者がアレトゥーザに依頼をしに行くというのにくっついてきただけで、依頼そのものには関わらない。というより、関われるレベルの依頼では無かった。

流石にその辺はわきまえているので、帰ってくるまで小遣いを稼ぐためにこうやって潮干がりをしていようという穣子の提案。取ったものは宿で買い取ってくれる。それを早苗がしぶしぶ承諾。で、今現在に至る。

「でもいいわよねー経費は先輩達が持ってくれてさー。いやぁ太っ腹太っ腹。」

「一週間もかかる旅の経費負担とかありがたすぎて涙出ちゃうよね。…お酒は自重しようね?」

「あんたもね?」

「あたし人前じゃ飲まないから。」

酒豪二人組。ただし穣子は子供なので、人前では我慢している。神なので飲んでも何ら問題は無いのだが、周りが『子供だからやめとけ』と言うのだ。

隣で美味しそうに酒を飲む早苗に殺意を抱いたのは一度や二度ではない。

また、先輩方は種族を知っているので、部屋でこっそり飲み会を開いて招いてくれたときは遠慮なしに飲む。またその量が凄いので、会計担当が毎回白目になるのだ。

「この間泣いてたわよ。酒で報酬以上の金が消えたって。」

「早苗も割と人のこと言えないでしょ。2升瓶飲んでも平気な早苗が珍しく酔って全裸になってたんだから。覚えてないだろうけど。」

「え、覚えてるわよ?暑くなったから脱いだ。別に普通でしょ?」

「……」

ダメだこいつ、早く何とかしないと。

てっきり酔っぱらって脱いだのかと思ったら、自分の常識の元脱いでいた。流石にこれには穣子も言葉を失う。

「…うん。そっか。もう何も聞かない。」

「えー何よーみのりん冷たーい。」

ほらそろそろ手を動かせ、と自分から魚介類を探し出す穣子。少し不満そうな表情で、早苗もそれに続いた。

もうどっちが子供でどっちがお姉さんなのか分からない。

「…今思ったけど早苗って何歳だっけ。」

「18。」

「…未成年、だよね?」

「四捨五入したら20だから、いける。」

ぐっと親指を立てて、更にそのままウインクをしてみせる。最早穣子にツッコミを入れる気力は無かった。

早苗はスタイルが本当にすばらしいので、正直大人に見えても何も不思議ではない。不思議でないから余計に困る。

「…分業しよっか。こっちやるから、早苗向こうお願い。」

「うわついに視界に入れたくないと来た。」

しばらく黙ってろという意味の方が正しい気もするが、あながち間違っていないのでそのままスルー。

早苗も早苗で穣子の提案を素直に飲む。ぶつぶつ何か言っていたような気はするが、それは聞こえないフリをした。

「…それにしても、この間のことが嘘みたいだよ。あんなことがあったのに、もう気にしてるのはあたしだけ、か…」

ぽつり、呟く。早苗には聞こえないように、小さく。

距離があるから普通の声でも聞こえなさそうだが、それでも自然と小さくなった。そのくらい、穣子の中には強すぎる印象を与えた、ある一つの事件。

それを振り返ろうとして、ふと気がついた。

「…あれ、何だろ。」

視線を遠くにやる。波打ち際に、一つ大きな陰があった。どうやら何かが打ち上げられているようだ。

気になり、それに近づく。淡い桃色のふわふわとした布に、黒いロングスカート。大きさは大体1.6~7メートルといったところか。

隣には同じく桃色の長い布が落ちている。緋色のフリルが縁に飾られていた。

それはどうみても、

「…人間、だよね?」

試しに頬をつついてみる。動く気配はない。

死んでいるのかと思ったが、浅いながらも息はしており、衰弱しているものの生きていることが分かる。

「…とりあえず、気休めだけどやっておくか。」

そっと手をかざし、霊力を込める。その手から淡い光があふれだし、その人の体を優しく包み込み。『癒身の法』に似ているものの、それとは違う、彼女のオリジナルの技だった。

自身の霊力を分け与え、その霊力によって内から癒しの効果を与える『穀物神の約束』。中毒、麻痺、沈黙を癒す効果もあるが、回復量としては『癒身の法』には劣る。

ただ、傷の治し方があちらは自然治癒力の活性化に対し、力を分け与え、中から治療するといったものなので、外傷の無い人間に治癒を施す場合は便利な技である。

「…よし。顔色も良くなったし、ひとまずは大丈夫だね。後は海水に浸かっちゃってるのを引き上げて、と。」

そう言って、ひっぱりあげようとするも、そこは子供の腕力。おまけに穣子は魔術系専門なので、このような力仕事はからっきしだった。

懸命に引っ張ったところでビクともしない。分かっていただけに、いざその現実をつきつけられると思わず苦い顔になる。

「あら、何か大物拾ってるじゃないの。」

と、背後から現れたのはさっき分業を頼んだはずの早苗。早苗も力仕事は得意ではないものの、穣子ほどではない。

「…本当に早苗は困ったときにやってくるから怖いよ。レーダーか何か付いてるの。」

「持ち前の勘が…あたしみたいな美少女が神様に見捨てられるはずなくって

「何で言い直したの。ま、いいや、さっさと運んで。まだ生きてるみたいだから。」

「ほんっと最近冷たいわね…まさか反抗期!?」

「いいから早く。」

穣子の冷たいツッコミに対して相変わらずふざけたようにボケて返す早苗。その表情は笑顔だった。

肩に手を回し、何とか持ち上げる。身長がやや足りずに足を引きずる形になってしまうが、それは許してもらうことにする。

「しっかし、この身なりこの辺の人じゃないわよね…一体どこからやってきたのかしら。」

とりあえずアレトゥーザの宿に運び、そこで介抱することにしよう。その早苗の提案に頷き、後に続こうとして、打ち上げられている衣を忘れていることに気がついた。

手にとって、じっとそれを見つめる。やや魔力を帯びている以外は特に変わったところは見受けられなかった。

「…これは東洋の織り方だね。もし出身のとこがこの織り方をするところなら…あの人ものすごい距離を流されてきたんだね…生きているのが不思議だよ。」

海の遙か向こうの大地を想像する、いや、思い出す。自分の生まれた、東にある国を。

そうしていると、背後から早苗の呼ぶ声が聞こえた。はっと我に返ると、彼女の後を追いかけて走り出した。

 

 

 

 

 

タイトルの由来は本館と東方やってる人なら分かりますね。

そして訳アリフラグを回収できるのはいつの日か…そしてリューンから始まらないのね。

キャラ情報(能力とか)はまた全員そろったらで。メンバーもろバレしてるから意味ない気はしますがね。

 

 

 

著作権

『碧海の都アレトゥーザ』 Mart様

オリキャラでもCWリプを…やる前に。

まずキャラを固めたいから、何回か試しに動かしてみたっていうのをやるかと。

 

 

 

 

 

セ「初めまして、私たちはカードワースのリプレイのオリジナルキャラで登場することになった、s

テ「盗賊のテラコッタちゃんだよーっ、よろしくねー!」

セ「ちょっと待ったぁっ!今私が話していただろう!」

シ「知らない知らない。あ、あたしシャトルーズ。魔法使いで参謀をやっているわよ。」

ウ「わたしは戦士をやってるウィスタリアだっ、よろしくなっ!」

セ「だから、ストップ、はい止まれ!いいから止まれ!まさかのリーダーが名乗れないというもの凄い事態が生まれてるから

シ「あら、そうね。それじゃ、レグホン自己紹介よろしく。」

セ「レグホンじゃなくてぇっ!」

レ「いや私リーダーじゃないから。…ほら、セルリアン、今の内に自己紹介。」

セ「…なんか、すまない。えーっと、私がこのチームのリーダーを勤めているセルリアンだ、よろしくたの

テ「ぶっちゃけリーダーって威厳全くないよね。」

シ「全くね。だから『あっれここのリーダー誰だっけレグホン?』ってなるのよ。」

セ「その辺は私も色々努力してるから!大目にみてください!!」

レ「…予想できてたけど、出だしからグダグダねぇ…皆もうちょっとセルリアンの言うこと聞いてあげましょ?」

セ「レグホン…(じわぁ)」

テ「レグホンってほんっとリーダーに甘いよねぇー。ていうかお人好しー。」

ウ「殴れば解決しそーなのに、わざわざ世話を焼くってあたりお前すげぇよなー。」

レ「あなたはまずそのすぐ人を殴ろうとするのやめて。」

セ「…えーあーとりあえず。この6人時々出番があると思うから、そのときは…え?あれ、さっき6人自己紹介したか?」

カ「あ、あのー…私、まだ…」

セ「うわぁあああごめんカナリアァァアアアアアッ!!」

シ「うわっ、リーダー最低。あんた仮にも仲間でしょ?仲間の存在を忘れるなんてリーダー失格ねー。」

テ「人でなしすぎるでしょセルりん。これだからリーダー(笑)は…」

セ「私が出番を途中で持っていかれたときとは大違い!」

レ(そういえば、私役職言えなかったわ)

カ「あうー…なんかすみません…えーっと、私カナリアって言います。長刀(なぎなた)をぶんぶん振り回すお仕事してます!」

セ「間違ってないんだけどなんか違う!」

ウ「おっ、んならあたしゃ拳と脚をぶんぶん振り回す役だな!」

セ「お前は!お前は仕事というよりデフォルトでそうだろ!」

シ「じゃああたしはリーダーを焼く係ね。」

テ「じゃあボクそれ捨てる係。」

セ「焼いて破棄される哀れなリーダー!!」

レ「それなら私は…頑張って焼かれるリーダーの傷を癒す係…?」

セ「それ何て生き地獄!」

シ「生かさず殺さず三途の川を永遠に往復させるその精神…感動するわ。」

レ「いっ、いや私そんなつもりじゃっ…!」

テ「お主も悪よのぉ、悪よのぉ!」

ウ「あたしゃぶっ壊すことは得意なんだけどなぁー…そいつはちょおっと無理な芸当だなー。」

テ「流石脳筋。こういうとこでは惚れ惚れするよあー羨ましい羨ましい。」

レ「ち、ちちっ、違うのっ、本当に違うのよーっ!!」

カ「…リーダーさんリーダーさん、向こうの会話に入らなくていいのです?」

セ「…疲れた。」

カ「およ…」

 


というわけで、なんか、オリ子でもカドワリプレイやる(かもしれない)から、そのときはよろしくお願いしますねー!ツイッターでは最近ギャースカ騒いでますねw
以下、キャラ設定です。あぁ、もちろん皆女の子ですよd


・セルリアン
役割 :リーダー
タイプ:勇将型(前衛)
身長 :158cm
年齢 :18
武器 :片手剣(二周りほど大きめ)
一人称:私
二人称:お前
三人称:お前等

堅物リーダー。背も低く胸もちったい。そのせいか仲間からはからかわれ、あまりリーダーっぽい扱いをしてもらえない。本人は一生懸命なのにね!
悲観的な一面があり、結構立ち止まると悩みやすい。そして心配性。自分が決めるべきところではちゃんとリーダーらしいんだけど、こういう面もあるから仲間にあんまり頼られないのかもね。ただしレグホンとカナリア(特にレグホン)からは慕われているようで、二人は積極的に言うことを聞いてくれる。
特にレグホンとはそんな関係もあり、志願時に一緒だったこともあり、かなり仲良し。
出身は田舎。別に過去に何かあったわけでもなく、親が元冒険者だったので志願した。そんなもん。


・レグホン
役割 :聖北信者
タイプ:普通型(後衛)
身長 :162cm
年齢 :17
武器 :スタッフ(メイス的な)
一人称:私
二人称:あなた
三人称:あなたたち

チームのおかん的存在。リーダーのセルリアンよりも背が高く、胸も大きく、物腰柔らかなせいで一番人望がある。お人好しで世話焼きさん。決してでしゃばらず、地味な役割をこなすのだが本人はそれがいいらしい。
戦闘のときはサポートに徹して、自ら敵に向かって攻撃することはほとんどない(自己防衛時くらい)。冷静的に状況を把握し、動く偉い子。
ただしセルリアンのことになると急に心配性になる。過保護。おかん。
過去は暗め。貧しかった村で、近隣にゴブリンやコボルトが住み着いたにも関わらず、冒険者を雇うお金さえもなく、放置するしかなかったところ、一気に攻めいられ、村が壊滅状態に。そのときに唯一逃げることに成功し、協会に拾われてここまで育てられた。もうちょっと色々あるけど、本人が仲間に話しているのはこの部分だけなので、一応ここでもこんなけ。
因みに神を熱心に親好しているというより、『神に対する考え方が面白い』といった考え方で聖北の教えを学んでいる。故に他の宗教にも興味があり、自分のところの宗教を固持しない。

・テラコッタ
役割 :盗賊
タイプ:万能型(前衛)
身長 :128cm
年齢 :8
武器 :短剣(本数いっぱい)
一人称:ボク
二人称:君
三人称:君ら

過激組その1。人を信じず、仲間も信じない。家庭環境故にそうなり、幼いながらもなかなかにエグい考え方をする。可愛いのに言動が怖い。
盗賊スキルが高く、人に気づかれずにお金を奪う。そしてそのお金でご飯を食べたり、自分の武器を購入したりする。ただ良心的なことに、お金を奪う対象は一応何の不自由もなく生活できる一般民以上が対象で、貧しい者からは取らない。しかも、盗っても少ないお金。…その分、対象は広いのでいい子とは言えないが。
服に色々な武器を隠し持ち、この一本だけは、と決めた武器がない。そのとき持っているもので対応し、片手だけに持ったり双剣のように扱ったりと、なかなかにトリッキーな戦い方をする。武器を複数持つのも戦術なのだろうが、自分のいつもの武器、と決めた武器がないのも誰も信じないことの表れか。
過去は一番暗い。生まれながらに両親から暴力を受けてきたせいで愛情というものを知らない。一人で強く生きていかなければいけないと悟り、家を抜けだし、他人から物を盗んで生きてきた。そのために子供とはとても思えない持論を説くことも。

・シャトルーズ
役割 :参謀
タイプ:策士型(後衛)
身長 :173cm
年齢 :28
武器 :杖
一人称:あたし
二人称:あんた
三人称:あんたら

過激組その2。人をいじくるのが大好きで、サディスティックな言動がしばしば。ただし全員にそんな態度を取るかといったらそういうわけではなく、要は『いじってなんぼ』の人を対象にする。
魔法を扱うときは、性能をわざと一長一短にする。命中精度を極めた場合は威力を下げ、威力を極めた場合はコントロール性能を下げる。これまた使い分けが上手い。ただ『補助系魔法』は自分の美学に反するらしく、使用しない。
テラコッタとウィスタリアと仲がいい。過激3人集と謳われる彼女らは、今日も敵を薙ぎ払い痛めつけていく。
過去は特に何もなし。志望理由も、『魔法の知識を広めたい、ゴブリンどもをただで薙ぎ払うのとお金が出るのとは違う、しかし自由が重要』という、この3点から。


・ウィスタリア
役割 :戦士
タイプ:豪傑型(前衛)
身長 :166cm
年齢 :32
武器 :なし(体術)
一人称:あたし
二人称:あんた(てめぇ)
三人称:あんたら(てめぇら)

過激組その3。粗野口調っぽいけど、粗野口調まで口調は荒くない。脳筋。バカ。殴ることしか頭にない。ただ、意外なことに世話好きな一面もある。が、あまり深く考えられないので、殴って解決させようとする。
戦闘はもう、リーダーの言うことも聞かずつっこんでいく。自由に暴れ回る。チームからも「あれには作戦指示してもあんまり意味がない」と口を揃えてため息をこぼす(シャトルーズさんにはウケがいいけど)。
実はテラコッタはウィスタリアのことをあまり良く思っていないらしい。また、ウィスタリアは別にリーダーをからかう気はない。つまり、あれが素の性格!
過去?特筆することあると思う?志望理由?「俺は俺より強い奴に会いに行く」。


カナリア
役割 :マスコット(!)
タイプ:万能型(前衛)
身長 :154cm
年齢 :不詳(見た目15歳)
武器 :長刀
一人称:私
二人称:あなた
三人称:あなた方

悲劇(?)の亡霊。ほわほわしていてマイペースちゃん。しかし神経質なところがあり、誰かと一緒に居ないと心細い子。自分が亡霊であることを気にしていて、性格は明るいながらも謙虚で控えめ。
生肌に直接触ると弱い者を死へと追いやってしまう(服は大丈夫)。なのでの長い服を着用し、何かを持つときは常にその服を巻き込んで持つ。長刀を持つときも同じ。
戦闘はリーダーの指示をちゃんと聞いてから動く。しないと動かない(自己防衛はともかく)。大体戦闘に加入するのに出遅れている感がするけれど、意外なことに足が早く、とても見た目からは想像できないような俊敏さを誇る。ただしテラコッタには負ける。
生前はとても幸せだった。ある忌々しい事故さえなければ(多分小説で書きます)。家庭は裕福で高貴の出。長刀を家庭で習ったが、なぜ長刀だったのかは謎。親に進められたかららしいけど、何で長刀なのか分からない。お陰で長刀をぶんぶん振り回すお嬢様という、何ともシュールな絵面ができあがった。冒険者になったのは、その長刀を生かす場面に出会いたかったから。
実は長刀の才能は死後に開花させたが、それは本人も知らない事実。

東方リプレイ 番外編0-3 『ネムリヒメ』

「…おはようございます。」

今日は何となく静かに近づきたかった。時々、私を起こしにきてくれたときのように。

私は朝が弱いので、どうしても起こされる側になってしまう。一度でいいから穣子を私から起こしてやりたいものだ。

…最も、今はまさにその立場に立っているのだが。彼女を起こそうとして、未だにできないでいる。

私よりもよっぽど寝起きが悪い。

「いくら私でも、ここまでグースカ寝ませんよ。」

もしも、このまま起きない日が続いて、ずっと、私が死ぬまでこのままだったら。

今日、目覚めなかったら、きっと…

…いつになく弱気になっている。そんな根拠はどこにも無いのに。最近風が強い日が続いていたから風邪でも引きかけているのかもしれない。

自分の下唇を噛んで、痛みでその不安を紛らわせる。歯を離すとひりひりと痛んだ。

このくらいの苦しみはどうということはない。私よりも、よっぽど辛い目にあっているのは彼女の方だ。

…私が、しっかりしなくては。

「……」

ふと、ここで一つの光景が脳裏をよぎった。それは、私たちが初めて依頼をこなしたあの日のことだった。

あのときはまだ右も左も分からない、本当の意味で駆け出しの冒険者だった。今の6人のメンバーが揃う前の、3人でこなしたあの依頼。ゴブリン退治の依頼だった。

3人故無事にこなすことができるかどうか不安だったが、無事に誰もが死ぬことなく帰ってこれた。今思えば、それが今のチームとしての始まりだったと思う。

「…少し昔話をしましょうか。」

いつもの椅子に座る。少しだけきしむ音が部屋に響いた。

 

 

「覚えてます?私が貴方たちと初めて依頼をこなした、あれ。あのゴブリン退治の依頼なのですが。」

今思えばかなりの無茶のように思える。ただ穣子と早苗は冒険者として私よりは長く、二人で討伐はやったことはなくても、実戦経験はあった。

宿には長く冒険者をやっいてかなりの実力を持っているチームがあるのだが、そこで少しだけお世話になっていたらしい。仲が良すぎてタメ口になっているのは流石に問題だと思うが。

「600spに200spと賢者の杖。割のいい依頼でしたよね。…その200spほどは初討伐達成だって、酒代に消えましたが。」

幼い神とあの万能巫女の酒の飲むことといったら。酒豪を二人抱えると大変なことになるというのがよく分かった一日だった。

ただ穣子は見た目が子供な上、種族をできるだけ隠しているようなので、子供だからお酒は無理だからジュース、と言われることもしばしば。そんなときは苦い顔をしながら飲んでいる。

そのときは無礼講だとか言って酒を飲んでいたが。

「安かったですが…とても美味しかったです。私思うのですよね。あのお酒が飲めたのは、貴方が居てくれたからだと。」

そうだ、一人では決して飲むことはできなかった。

穣子と、早苗と、皆と出会ったからこそ飲み明かすことができるそんな特別な酒。全員が揃わなくては決して飲むことができない。

特に、貴方が居なければ。

「またあのお酒が飲みたいです。貴方が居ないと飲めないのですよ。貴方が一緒でなければ…」

どれだけ高い、美味しい酒を振る舞われたところであれに勝ることはできない。

はっきり、そう思う。

一緒だからこそ味わえる、そんな。

「…ゴブリン退治の依頼の話が酒を飲む約束の話になっちゃってますね。」

自分の話がブレていることに気がつく。同時に、それほどまで特別なものだということを再確認させられた。

これほどまでに、私は、この幼い神様が好きなのだ。

何度も助けられ、傍で笑顔で居てくれる穣子が、誰よりも。いつ好きになったのかは分からないが、確かに好きなのだ。

「…尽くされるだけ尽くされて、尽くし返せないのは酷い話だと思うのです。」

一月が経とうというのに、眠りから覚ましてやることができない。

夢の檻に閉じこめられた穣子を、未だに助けることができていない自分が居る。

…もしも。本当にあの物語のようにして目を覚ましてくれるのであれば。

唐突に思い出した童話。王子様が、眠り姫を助ける、あのお話。

私は、彼女の王子様にはなれないか。

「……」

顔に触れて、目を閉じる。そして。

 

ゆっくりと、その唇に、自分の唇を重ねた。

暖かく、柔らかい、彼女の。

 

…身勝手だとすぐに思った。一方的に想っていたとすれば、とても残酷なことをしてしまったと思う。

離すのが怖い。顔を見るのが怖い。

私はふさわしかったのか。彼女が私をどう思っていてくれているのか。

彼女を見なければ、分からない。

「……あ。」

思わず声が出た。

それは、私の願った表情でも、恐れていた表情でも無かった。

彼女は、とても、

幸せそな顔をしていた。

いつもの、とまでいかなくても、優しい、暖かい、穣子らしい表情。

身勝手だと思った口づけは、彼女にとってある程度本意的なものだったらしい。目を覚まさなくともよく分かる。

それほど、彼女は穣子らしい顔をしていた。

自分も想っていてくれた証拠。それが恋愛対象なのか、違うのかは分からない。分からないけれど、確実に。

「……」

それが、私は、

良かった。

とは、思えなかった。

「…もう、手遅れだというのですか…?」

穣子はもう、遠い、遠い、遠すぎるところに行ってしまってのか。

もう、私の声は、想いは、届かないのか。

もう、穣子はここには居ない。

脳裏に、そうよぎった。

手を伸ばしても届かない。姿も見えない。

どうすることもできない距離に、穣子は居る。

「…私、は、」

カノジョノオウジサマデハナカッタ?

 

昨日、怪我の治療のために道具を漁っているときに一通の手紙を見つけた。

整頓された薬入れの奥の方にぽつんとあったそれ。分からないところに、しかし、注意深く探せば出てくるところにある手紙というのは。

「――遺書。」

思わず背筋がゾッとした。

何故こんなときにこんなものを見つけてしまったのか。

穣子のことだから、これ自体は前々から残していたものなのだろう。いつ消えるか分からない、小さな小さな神様。何が起こるか分からない明日のために、きっと彼女はいつかのために書き残していたに違いない。

私はそれを、そのときは読まなかった。

読まなかったが、持っていた。持ったまま、昨日は帰った。

 

「…死んだら死体は丁重に燃やす。消えたらそのまま何も残さない。目覚めない状況になったら、」

すぐに、殺してくれ。

自分の考えられる状況を、その手紙にはいくつも書かれていた。

用心深いと思うと同時に、いつかこんな日が来ることを、予言していたように思えた。

一月経てど目覚めない。

もう呼びかけても届かない。

きっと、彼女は目覚めることなくこのまま眠り続けるだろう。生きているのか、死んでいるのかも分からないまま。

私も、それは死よりも絶望的な状況だと思うから。

「…穣子。」

愛していました。

小さく、傍に居ても届かないくらい小さく呟く。私は静かに自分の片手剣を握った。

震えている。どうしようもなく、治まらない。

寝ている相手だから、人振りで殺すことができるだろう。それなのに、なかなかその

一振りが出来ない。

分からなくなってきた。本当にこれでいいのか。まだ他に何か方法はあるのでは無いか。

過呼吸になり、ぐちゃぐちゃになった頭の中で、

 コノママ生カシテドウスル?

誰かが、囁いた。

 

たった、その一振りで、儚い命は葬り去られた。

赤い、紅い花が咲いた。

ぽたぽたと、剣の刃から朱の滴が滴り落ちた。

そして、彼女は二度と目を覚まさなくなった。

 

 

 

…なんて。

「なんて、出来るはず無いでしょう…!!」

気が付けば、剣は腕から力無く落ちていた。音を立てて落ちたはずなのに、それすらも分からなかった。

赤でも紅でも朱でもない、代わりに透明な滴がいくつも落ちて、床に跡を作る。

勿論、返ってくる声は無い。私はただ、嗚咽を漏らして泣いていた。

 

遺書には続きがあった。それは、仲間の皆に当てた手紙だった。

私はそれを、自分宛のものを探した。あまり多くは書かれておらず、けれど、しっかりとした文字で書かれていた。

「衣玖さんへ。

 衣玖さんのことだから、絶対にあたしがこうなって、泣きわめいていると思う。君は優しすぎるからね、誰に対しても。」

誰にでも優しくできたのではない。穣子だからこそ、私は優しくできた。他の人に穣子と同じように優しくなど、酷いことを言うが、とてもできない。

「だから、あたしから一つ言っておくよ。自分の本心に嘘は付かないで。あたしの言ってたことなんて全部忘れちゃっていいから、君のやりたいように、好きなようにやればいい。誰もそれに対して怒ったりしないから。君が立ち直って、また笑っていてくれるのが、あたしからの最期のお願い。

 

…衣玖さん。大好きだよ。」

 

好きなように。そう、彼女が残してくれた。

自分の気持ちに嘘を付くな。自分のやりたいようにやれ。

それならば、私は私の好きなようにやらせてもらうとする。

「…私は…まだ諦めることができません…酷いことをするとは思います…しかし…!」

それでも、私は穣子が帰ってきてほしいから。

たとえ可能性が限りなくゼロに近くても、私はまた、穣子と一緒に笑って、泣いて、喜びたいから。

ずっと隣にいてほしい。断ち切ることのできない、確かな想い。

だから、私は。

その遺書を、破り捨てた。

「また貴方の隣を歩きたい。貴方の傍に居たい…いえ、居させてください。私には、貴方が必要なのです…貴方の居ない世界なんて…」

きっと、耐えられやしないから。

死んでいないから、遺書の通りになんてする必要など無い。時々は私のわがままを貫き通すのもいいはずだ。

…最期なんてさせない。

くしゃりと、紙の音がした。

 

 

「…今日はすみませんでした、取り乱してしまって。」

もう夕方を過ぎて夜になろうとしていた。目を覚まさない眠り姫。その姿を見るたび、心が痛む。しかし、いつかは目を覚ます。そう信じて、私は明日もここへ通う。

目を覚まさないとしても、私には貴方が必要だから。

「そろそろ帰りますね。では…」

 

ドアに手をかけて、気が付いた。

「…穣子?」

ゆっくりと穣子に近づく。手が、体が、震えていた。

優くて、暖かい。ずっと待っていた、

「………衣玖…さん……?」

愛しい、その声がーー

 

「……、おはようございます、穣子!」

「…おはよう、衣玖さん。」

 

 


めでたしめでたし。

 

 

 

 

 

以上『ネムリヒメ』のリプレイでした!

この話が大好きで大好きで…!!衝動でやりたくなってしまったリプレイでしたw

リプレイっていうリプレイは今回初めてだったのですが、意外とすんなり書くことができましたこの話がおいしすぎたんですねはい。

 

以下、シナリオの更にネタバレ

本編では色々なキーコードを使いますが、今回は『治癒』『鑑定』『解錠』『攻撃(からの逃げる)』、シナリオ内だけのキーコード『昔話をする』『キスをする』の描写をしました(鑑…定?)。でも実際は『攻撃』してなかったし『明かり』を仕様してたりします。『明かり』は話の流れ的に入れることができなかったんです…!

あと関係は『両想い』でやってます。だってもう、この二人本館じゃあ両想いみたいなもんじゃないn((

…まぁ、実はリプレイでの関係は衣玖さんと早苗がフラグ立てる気がして怖いんですけどねアレモシカシテオヤジサンノノロイカ(_3が性転換して_1に惚れるってあれ)?

 

 

シナリオ著作権

『ネムリヒメ』 春野りこ 様

東方リプレイ 番外編0-2 『ネムリヒメ』

昨日の文で直した方がよかった文章見つけたけど放置((

 

 

 

 

同じ道。同じ風景。

その中の、昨日とは違うもの。

「やはり、咲いていましたね。」

昨日見つけた、一輪の花。私の睨んだ考えは正しく、今日は蕾がすっかり花開いて、仲良く二つ並んでいた。

朱色。私の緋色には遠い色。しかし、色を取れば朱も緋も同じ『あけ』になる。

この二つの朱を、私はまた穣子の姿を重ねた。

それは今までの日々か。あるいは、私の願いか。

「…一緒に行きますか?あの、眠り姫の元へ。」

頷くわけも、はいと返事するわけもない。しかし、そうですか、と一言呟き、花を傷つけないようにそっとその花を摘んだ。

今日のおみやげはこれにしよう。

 

 

「ふふっ、今日も来てしましましたよー。元気にしてますかー?」

今日は空元気で挨拶をする。やはり返ってくる返事は無い。

相変わらず眠ったままだ。私は無理矢理にでも笑顔を作り、何も挿されていない一輪差しに摘んできた花を飾った。

朱の花が少しだけ揺れる。窓辺の日がよく当たるところに置くと陶器の重たい音がした。

花も、彼女も喜んでいるように見える。

「綺麗でしょう?昨日は一つしか咲いていなかったのですが、今朝見てみると隣にあった蕾が咲いていたのです。…まるで、」

私たちみたいだ。そう言おうとして、やめた。

一方的な思いこみでしかない。穣子が本当に私のことを想っていてくれたという確信がなかった。何も気にしなくていい、それは分かっている。

分かっていても、穣子の好きの意味が分からない。分からない限り、そう言えやしない。

それに今言うべきではないと思う。眠っている彼女と私とはとても距離が遠い。

この花のような近い距離にはとても無い。互いに笑い合えない今、あまりにも酷い言葉だと思った。

代わりに。

「……これからの、私たちですね。」

これからの、それには多くの意味が含まれている。

目が覚めて、また二人で一緒になって笑える日が続くことの未来。早く目を覚まして、自分の元へ返ってきてほしいという願い。この寂しい日が、いつかは終わることへの希望。

…なによりも。

私が想いを届ける日が来て、二人一緒の気持ちになれる、その日のための、これから。

気のせいかもしれないけれど、そうだね、と笑ってくれたような気がした。

…これは、自分の妄想だろうか。

 


彼女の服を変えるために脱がせる。定期的に衣服を変えてやっていた。

同じものを着続けるのは衛生的によくない。あまり考えなくてもいいのかもしれないけれど、私なら絶対に耐えられない。

「…あら。」

その途中、今まで気が付かなかったことに気が付く。左腕のところに大きな擦り傷があった。

眠っているせいか、傷が治るのが遅くなってしまっているらしい。出血こそ止まっていたものの、その傷には膿が溜まっていた。

このまま放置するのはよくない。彼女の部屋を漁り、針とガーゼと消毒液を借りる。しばらく放置していたので、多分大丈夫だろうが一応熱消毒もしておく。どこに何があるのか完全に把握している自分が居て少し驚いた。

自分が穣子の部屋を過去に漁っていたわけではなく、いつも傍で見ていたから覚えていた。ここでたわいもない雑談をしたことも、一緒に何かを食べたこともまるで昨日のことのように覚えている。思い出の一つ一つが大切な宝物だ。

それを失うことが怖い。手からこぼれないようにしようとしても、手に持てる宝物の数は限られている。

無くしちゃったのなら、また作ればいいよ。優しくそう言ってくれたのは、紛れもない穣子だった。

「…嘘を付くのは、許しませんからね。」

充分に熱くなったことを確認して火を止める。彼女の持っている火が出る道具も、何度も作業を手伝っていると自然と使い方を覚えられた。

準備が整うと彼女の元へ戻り、膿が溜まってしまった所へ熱した針を刺す。ぴくり、と体が少しだけ反応した。

「痛いでしょうが、少しだけ我慢してくださいね。」

こういうものはちゃんと医学の知識がやった方がいいのだろうが、下手に動かせない以上私がやった方がいい。…自分がやりたいというエゴが無いとは言い切れないが。

布で流れ出た膿をふき取った後、別の布に消毒液を染み込ませ、傷口に当ててやる。寝ていても痛いのか、少し苦しそうな表情を浮かべる。

痛くても、目を覚ますきっかけとなってくれるのならば。無意識のまま、何も出来ず、そのまま死ぬしかないのなら、このくらい。

…それでも、無理だとしたら。

ーいっそ、殺してしまったら。

「…我ながら、酷いことを言います。」

稀にこういったよくない考えがよぎる。一月もこのままのせいか、相当参ってしまっているらしい。

頭を振って、その考え方を否定する。愛しい人はまだ生きている。きっと、目を覚ます。だからそれまでの間、傍に居てやろう。

もし自分がこんな状況になって、誰も居てくれないとしたら、きっと裏切られただとか、忘れられただとか思うだろう。愛しい人の姿の無い、そんな世界なんて。

…頑張れ、と自分に言い聞かせる。同じ立場になったらという『もし』を考えるだけでもその考えを否定することが出来た。

しかし、私自身は無意識のまま、何も出来ずにそのまま眠り続けることは地獄でしか無いと思う。それは死ぬことよりも、ずっと辛いこと。

だから。

「…相当参ってますね。」

少し風に当ててから、ガーゼでその傷を隠す。少しだけ手が震えていることに気が付いた。

ふと、彼女の寝顔を見る。先ほどの表情に加えて、少し陰りが見える。

…心配させてしまったか。

「ごめんなさい、私は大丈夫です。だから、貴方は、」

早く、目を覚ましてください。

 


「そうそう、昨日珍しく魚料理以外のものがまともに作れまして。」

今日も何気ない雑談を始める。今日は怪我の治療に時間がかかったため、昨日ほど話をする時間はなさそうだ。

「焼き芋が焦げることなく作れたのです。この私が、ですよ?凄くないですか?」

因みにこれは昨日帰って、雷鼓が夕食の準備を始めたとき、暇だったから焼いてみたものだ。

いつもなら食べるのをためらうようなものにしかならないのに、運良くそのときはまともな焼き芋が出来上がったのだ。雷鼓も美味しいって言いながら食べてくれた。

「…貴方にも食べさせてあげたかったのですがね。」

少し、悲しそうな声になってしまった。

とても穣子が作る焼き芋にはほど遠い出来映えだが、それでも彼女なら喜んで食べてくれただろう。

いや、焼き芋にうるさい彼女のことだから、逆に色々ケチをつけてくれたかもしれない。同じ材料を使っているはずなのだが、どうしても同じものが出来ない。

雷鼓は多分、私の本音を見通していたのだろう。本当は穣子に食べさせてあげたかっただろうな、ということはきっと分かっていたと思う。

分かっていて、食べて、美味しいと言った。

それは多分、彼女なりの気遣いだったのだと思う。届かない想いの、代弁をするように。

そんな彼女の気遣いには感謝している。それと同時に、とても申し訳なく思った。

「…久々に貴方の作った焼き芋を食べたいですね。」

そういえば、長く穣子の料理を食べていない。懐かしい、あの味を久しぶりに思い出したい。

「今度、貴方と一緒に作って食べたいです。そのときはもう一度、昨日みたいに上手く作りますよ。貴方からすればゴミ同然かもしれませんが…」

それでも、貴方に食べさせたい。いつも私の傍で笑顔を振りまいてくれる貴方に。

いつも傍に居てくれて、ありがとうって。

 

 

 

 

オリジナル色が強いです。まぁ、私がリプ書いたら大体そうなっちゃうんですよね。

あとこのコメ返事は3まで書いたらしますね。

東方リプレイ 番外編0-1 『ネムリヒメ』

番外編もへったくれも、って感じですが…えぇそうですよ、試し(勢い)でリプレイ書いちゃったからそれで公開するだけですよ!!

パーティは東方宿の第4パ…えぇメインブログで今ハイライト当たってるあの6人ですはい。…とりあえず、このリプレイを乗せた後にキャラ設定とかやる(リプレイ仕様の、ね?)つもりでいるので…!今はもう、適当に読んどいてくださi((

今回知らない人が見に来るのがよーくわかっているので、ざっくりと説明しておきますと、

 

衣玖さん(緋色イメージの妖怪)→穣子(朱色イメージの豊穣神)

早苗と雷鼓さんは今回おまけ

 

とだけ頭に入れていただければ、多分大丈夫です!

あとここが始めての人は気をつけて、イチャベタしない百合ですので。

 

 

 

 

今日は風が強く吹く日だった。

魔法の森へ向かう途中に、衣玖は一輪の花を見つける。更にその花は朱色で、少しだけ胸が痛む感覚を覚えた。

どこか寂しげに咲いているような朱色の花。

「…お一人…なのですか?」

花に語りかける。当然返ってくる言葉などない。

しばらく見つめていて、摘んで今日のおみやげにしようかと思ったが、そのままやめた。同じ茎からもう一本別の方向に伸び、そこに一つの蕾が付いていることに気が付いたのだ。

明日には咲きそうなもう一つの花。まるで咲いている花を追いかけるかのように、その花もついてこようとする。

そう、見えた。

 

あるおとぎ話にあった。

お姫様が悪い魔女に毒林檎を食べさせられて、深い眠りに落ちてしまう話。

そのお姫様は王子様のキスで目を覚まし、めでたくハッピーエンドとなった。

「…キスで目が覚めるのならば、どれだけ幸せなことでしょうか…」

私の、愛しい、愛しいあの幼い神様。

今は死んでしまったかのように眠り続ける、私のお姫様。

「…死んでなんか、いません。」

明日には起きる。今日は起きなくても、明日には起きる。

そう何度も何度も繰り返し、自分に言い聞かせた。

眠る前にそう呟き、昨日も呟いた言葉を、明日も呟く。

寝ているだけで、死んだのではない。

息はちゃんとしているし、爪も、髪の毛も伸びる。それは間違いなく、生きている証拠。

ただ、言葉を返してくれないだけで。目を開けてくれないだけで。

 

私は今日も、あの人に会いに行く。

目覚めない、あの人の元へ。

 

 


 ー『ネムリヒメ』ー

 

 


「…おはようございます。」

彼女の部屋に入る。いつもなら返してくれる返事は今日も無かった。

彼女は無表情のまま、目を閉じて寝息をたてることなく静かに眠る。私が来ていることに気が付いているのかどうかさえ分からない。

そんな状態が、一月は続いている。その間私は一日たりとも欠かすことなく彼女の元へ出向いた。

こうなってしまった理由は、ちょっとした崖から落ちたから。大した怪我は負わないような、小さな崖。ちょっとした怪我で済んだはずの。

そんな場所でも、打ち所が悪ければこのような状態になってしまう。それが、自分たちのもろさを露骨に表しているようで。

ちょっと注意していれば、こうならずには済んだのに。手を伸ばして、間に合っていれば今までと変わらない生活が続いていたのかもしれないのに。

皆で笑って、泣いて、幸せな時間を共に…

「……」

なんて、後悔はいくらでもできる。穣子が後悔は自分の感情を押し殺した先にあるものだと言っていたのを思い出した。

私のこれは、後悔ではない。仕方の無かったこと。だから。

「…今度は。今度はちゃんと、貴方のことを守りますから。

もう二度と、こんなことにはならないように…」

今は、その現実を受け入れる。眠り続ける彼女の側にできるだけ長いこと居てやっ

て、起きたら一番に迎えに行く。

それが、私のできることの精一杯だ。

それ以上は、今は、昔は何もできない。

そっと金色の髪に触れる。優しく、その頭を撫でてやった。

彼女は常に帽子を被っているので、撫でられることにあまり慣れていない。だからよ

く覚えている。

「…きっと、目を覚ましていたら。」

貴方は、笑ってくれたのでしょう。

その言葉は、誰に届くこともなく、部屋の静寂の中へと消えた。

 


「そういえば、今日早苗さんが料理当番だったのですが。」

毎日彼女の元へやってきては自分の近くで起きた雑談を彼女にしてやった。雑談をしているときの彼女の顔色は何となく良く見える。安心しているのかもしれない。

周りから見たら独り言のようにしか聞こえないのだろうが、どうせこの部屋には私と穣子しか居ない。

「創作料理に手を出してて、唐揚げが出てきたのですよ。それは別に良かったのですが…」

いつも何気ない会話をして、身近な人の名前を出して。今日は何の話をしてやろうだとか、毎日考えて。

時々手みやげに花を持ってきて、花瓶に挿してやったりもする。枯れかかると誰か(多分早苗だろう)が破棄してくれている。

それはある意味助かった。私がここに来ているのはいつもお昼頃から夕方、日が沈む頃まで。どうしても花は私の居ないときに花びらが散り始める。

自分の居ない頃合いに。少しだけ、彼女が私の居ない間に目を覚ましてしまったら、と考えてしまう。

が、すぐにそれを否定した。目を覚ましてくれる、それ以上に嬉しいことは無いから。

「なんと、中身が蛙だと仰るのですよね。気持ち悪いうんぬんもありますが、その前に貴方の信仰している神は何だって話ですよね。」

因みにその唐揚げ自体はとても美味しかった。料理上手ということを認識させられるのには充分だった。

「……」

…その様子だと、中身を聞いた瞬間早苗に殴りかかりに行ったんだろうね。なんてものを食わせるんだって。

…と、起きている彼女だったら返してくれるのだろう。

自分の話し方から、仕草から、彼女は私のことを全て見通してくる。隠し事なんて通用しない。周りには隠し通せたことでも、彼女だけには通用しなかった、なんてこともあった。

…いや、一つだけ彼女に気づいてもらえない感情があるのは確か。これは逆に、周りの皆が気が付いているのに、彼女だけ気が付いていないという特別な感情。

私が、彼女が好きだということ。

私は彼女が私のことをどのような好きでいるのかは分からない。好きの意味は幅が広すぎる。

友達としては近すぎて、親友としてはずれていて、恋人と言うには遠すぎる。

そんな変な位置に、私と穣子は居た。

手が届きそうなのだが届かない。姿が見えなさそうなのだがはっきり見える。

今はもう、彼女は遠い遠いところへ行ってしまったかのように錯覚してしまう。

二度と戻ってこないのではないか。

そう思ったことだって少なくはない。

「…話題が尽きてしまいましたね。」

時計を見つめる。すでに二時間ほど経っていた。日が傾くのにはまだ少し早い。

しかし、自分の好きな人と一緒に居ると時間が経つのが早い。眠っていたとしても、一緒に居ると幸せだと感じる不思議な力がある。

…これで目を覚ましてくれれば言うことは何も無いのだが。

話題が尽きると、私は何も言わずにっこりと微笑みかける。ここに居るから、そう伝えるために。

もしかしたらひきつった笑顔かもしれない。心から笑えて居ないかもしれない。どんな顔をしているのか、私も、彼女も分からない。

あまり酷い顔はしていないと思う。そんな顔をしていようものなら、穣子なら急いで目を覚まして私に声をかけてくれる。私を放っておいて一人眠りこけるなど、そんなこと許すはずがない。

…なんて、傲慢な考えだなと思う。それは私がそうしてほしいだけであって、穣子自身の意見を完全に無視している。都合のいい考え方にもほどがある。

それと同時に、本当に自分は穣子のことが好きなのだと再認識させられる。どうしようもなく惹かれて、恋い焦がれて。

困ったことに、彼女がどう思っているのかは全く分からなかった。

「…早く目を覚ましてくださいね。」

そう言って、彼女の頬を指でつつく。ぷにぷにして、柔らかかった。

幼い特有の肌。柔らかくて、死人にはとても真似できない。

眠っているだけで、死んではいない。しかし、眠り続けることは苦しいことではないのだろうか。目を覚ましたくてもできない、辛くて、もどかしい。

…私なら、それなら殺してくれと言いたくなる。

最も、彼女の意見を無視した自分勝手な思いでしかないが。

「…また明日も来ますね。」

もう一度、人差し指でその柔らかい肌をつつく。

笑っているような気がした。

 

 

 

 

 

 

 

本編では病院で、ということになっていますが、宿でということにしています。

そして一回目でやるような内容じゃな

リレー小説 ⅩⅢ

キバリんとつらねちゃんとのリレーです。

12話→ http://sakura29.hatenablog.com/entry/2014/03/27/192846

 

 

「さてと、どこから説明すればいいものかしらね。」

早苗は穣子と静葉のスペルカードを服の中に入れる。狼に襲われても、それ自体は発動できる状態にあった。

しまうと今度は自分の袖からか針、衣玖に近づいてからどこからか白い糸を取り出す。恐らくボロボロになった穣子の服を縫い合わせるつもりなのだろう。原型などほとんどなく、血で真っ赤になった挙げ句にまだ生暖かい。常人では触ることすらためらいを覚えるだろう。

「…あの、その前に一つよろしいですか?」

「ん、何?」

「…血が凄いことになってますよ。」

早苗はそう言われて自分自身を見つめる。何も気にせずにそれを扱っていたので、服には致死量を彷彿とさせる血がついていた。

自分のものは一つもないが、何も知らない者が見ると心配するか、逃げ出すかはするだろう。

「そうねー。帰ったら奇跡の力で綺麗にしておくわ。」

『ただのご都合主義とも言うけどね。』

明るい穣子の声は、表情こそ見えないものの、どんなことを思って、どんな風に考えているかがよく分かる。自分の体を乱雑に扱われても、特に気にしていないようだ。

心が広いというか、あまりにも気にしていなさすぎるというか。神である彼女は、ほとんど執着がなかった。

それが以前に早苗から言われたことによって気にかかり、思わず少し顔をしかめた。

「で、よ。まず何が起こっているかを説明するわ。見ての通り、妖夢…正確には違うのだけれど。それが襲ってきたわよね。」

「えぇ…あれは何だったのです?ドッペルゲンガーというものでしょうか。」

「そう。それも、かなり特別なタイプのね。」

ドッペルゲンガーについては博学な穣子が説明をしてくれる。

それを見たものは死ぬだとか、死ぬ直前に見るだとか言われていて、本人を乗っ取るタイプや、ドッペル自身が誰かに化けるタイプ、自身の影から生まれるタイプと、様々なものが存在するらしい。

『今回は…多分、一番近いのは3つ目のやつかな。』

「質問です、どうして見てもいないのに分かるのですか?」

「あたしに聞かれても。」

「貴方ではありません。」

早苗の方を向いて言うものだから、早苗は分かっていて反論する。同時に、頭の中でくすくすと笑う穣子の声が聞こえた。

『どう感じても、あれは悪霊だったからね。神は汚れには敏感って言ったでしょ?だから、あれが悪霊だってすぐに分かる。妖夢の半霊は浄土のものだからそんなものはなく、純粋な綺麗な幽霊。』

「そしたら、あれは何か?」

「…妖夢さんの影から生まれた、ドッペルゲンガー?」

口に手を持ってきて、色々考えながらそう答える。対する早苗は待ってましたとばかりにバッと手を挙げて、

「惜しい!5早苗ちゃんポイント!」

「あっちゃーグレイズでしたかーって!何ですか早苗ちゃんポイントって!?」

「正解したら貰える早苗ちゃんポイント。100ポイントで衣玖さんのパンツをプレゼント。」

と言って、何か白い布をひらひらさせて見せる。それを見て、衣玖は恐る恐る太股付近に手を持っていき、

「……っ!?」

「で、そのドッペルなんだけd

「その前に返せ!!」

全く、いつの間に取ったのか。夜と怪我をしてあまり動けないのをいいことに、早苗の窃盗スキルはやりたいほうだいである。

「100早苗ちゃんポイントたまったらね。で、影っていうか…半霊の心の闇の部分、とでも言った方がいいかしら。」

「…半霊に心なんてあったのですか?」

『幽霊だかんね。何か思うことがあったんだろうね、きっと。…それが具現化して、妖夢みたいな見た目になった。』

仮説だけどね、とその後に一言付け足す。少し不思議に思うところがあるらしく、曖昧に衣玖は首を縦に振った。

「次に第二問!誰に対しても三枚おろしにしようとしてくるドッペルちゃんですが、みのりんやあたしに対しては攻撃してきませんなーんでだ!」

そのギャグ調の問題のだし方はなんとかならないのかと思いつつ、再びの疑問。

「…え?そう、だったのですか?」

『やっぱり気がついてなかったね。……』

守る必要なんてなかった、そう言いかけて途中で言葉を飲み込んだ。衣玖を傷つける、その思いもあったがもっと別の方向に理由はあった。

純粋に、守ろうとしてくれたこと。それがなによりも嬉しかったから。だから、彼女の行為を否定することはできなかった。

「ごめんなさい、全く。えぇと…理由は…穣子も早苗さんも、神で清らかな存在だったから?」

「半分合ってるわね。25早苗ちゃんポイント。」

喜んでいいのか全く分からない。

「ほぼ確信していいと思う。自分を浄化してほしいために、それができる神には攻撃しない。他のものには自分の存在をしらしめたかったから、手あたり次第襲って自分の存在を植え付ける。…妖夢の善行を否定するかのように、ね。」

「自分の存在を知ってほしくて、けれど、止めて欲しい…そんな、矛盾しているけれど、確かな想い。間違っていると分かりながらも、その行動をやめることはできない…そんな、ジレンマ、ですか。」

「推測上そうなるわ。10早苗ちゃんポイント。」

腑に落ちるような、落ちないような話である。

行動そのものは矛盾している。自分は忘れらる、妖夢の人間部分しか見て貰えない。それが羨ましくて、憎くて、思わず焦がれてしまったその欲に手を伸ばす。

間違っていると分かっていても、得たいものがあったから。

「……ん?」

ここで、また疑問が。

それはあのドッペルや幽霊のことではなく、穣子自身への疑問。

「はい、次の質問は?」

「穣子、一つ聞いてもいいですか?」

『なぁに?』

ここで、穣子は自分の失態に気がつくことになった。

「貴方、『成仏しない幽霊は汚れたアンデット同様』って言ってましたよね?なのに、どうして妖夢さんの幽霊は浄化させてもいいのですか?」

『…あー。』

「…嘘をついておられましたね?」

嘘を付いてたことを忘れていた、というような間抜けな声。穣子にしては珍しい失敗である。

本当のことを話そうかどうか戸惑ったが、隠し通すのは困難だろうと思い、少し恥ずかしそうに答えた。

『…あんまり大事だと思って欲しくなかったんだよね。幽霊が居る、ちょっと数が多いだけ。その程度の構えで居て欲しかったんだ。
怨霊がばっこしてて、汚れが酷くて居るのだけでもかなり辛い。強いのなら一匹だけでも辛いし。で、中心にはそんなのが居て、他にも汚れが酷い幽霊が居る…なんて言っちゃったら、間違いなく衣玖さん、あたしを帰らせるでしょ?』

「……」

「…えーと、みのりん?」

多分、早苗の中に入って、彼女の真理としているものを直に感じているせいなのであろう。隠しておくべきものがボロボロ見えている。

正直な彼女の性格のせいか、嘘をつくのがとても下手くそになっている。いや、実際早苗自身は嘘をつくのがなかなかに上手いが、人の精神を媒介とすることで穣子の性格に無意識に小さな影響が出ていた。

そしてそんな本人はやらかしたと思うのに時間がかかるほど。

「…そんなに、無理をしてなさったのですね…!」

間違いなく、琴線に触れた。また一人で無茶をしようとした。

相談してくれなかった、またあのときのように自分だけで解決しようとした。そんな気がして、ついに耐えられなくなった。

パァンッ!!

「っ!!?」

「いつも…いつも言っているでしょう!一人で無理しないで、もっと私たちを頼ってと!!」

『衣玖さん!?』

穣子がオロオロした様子で何かを言おうとするも、衣玖はいっさい聞く耳を持たない。

…おわかりいただけただろうか。この今の、どうしていいか分からない状況を。

「今回もまたそうするつもりだったのです!?結局…私は頼りないですか!?私では、貴方を支えることはできませんか!?私では…私ではっ……!!」

再び涙ぐむ衣玖。いつもならこれで、胸を打たれるのだろうが…

今回ばかりは、戸惑う穣子の声。

『あのー…すっごく言いづらいんだけどさぁ…』

「…何ですか。」

『今殴ったの、早苗だよ?』

「…え。」

冷静になって、目の前の人物を見つめる。

確かに穣子は早苗に入っている。しかし、精神としてしか存在彼女にとって、痛覚という概念はない。

つまり、今殴ったのは。

「…ナンデナグラレタノ?」

痛む頬を手で押さえ、理不尽を訴える瞳で衣玖を見つめる早苗。

そう。早苗、しか殴っていない。

「うわぁぁあああぁぁぁああすいませんでしたぁぁぁぁああああぁぁあっ!!」

頭を地面に打ちつけんばかりのローリング土下座。お前怪我はどうしたのかといわんばかりの激しさがある。

スイートポテトルームを張ってもらっていなかったら完全ぱっくり割れをしている。

「うわぁぁああん衣玖さんのいくじなし!もう知らない!!」

「うわそれどっかで聞いたことあるって、今のいくじなしもへったくれも何でもないでしょう!!ただの悲しい事故だったんです!!」

「そうやって言い訳して…本当はあたしのこと嫌いなんでしょ!!」

「違います!だからこれはただの事故で!」

勿論本気の口論ではなく、からかいだと分かっているので、穣子はくすくす笑いながらも、少し暖かいものを感じていた。

「…あら?みのりんどうしたの?」

『ううん…いいなぁやっぱりこういうのって、思っただけだよ。』

その言葉が何を意味しているのか。衣玖にはよく分からなかったが、当たり前でしょ、と早苗は短く返す。

その顔はとても優しい表情だった。

「…さてと。衣玖さんも土下座できるくらいに元気になったし、そろそろ行きましょ。」

立ち上がり、スカートをパンパンと払う。いつの間にか穣子の服はきれいに縫われていた。

ただものすごく血みどろで、もう一度着たいとは絶対に思わないが。

…あれ、そういえば。

「…結局、アレは?」

「…あぁ、そもそも返す気なかった。」

そう、彼女の手に持っている白いそれは、一本の糸を出してとても小さくなっていた。

その後、衣玖さんの大きな怒鳴り声が森に響いたが、それはまた別のお話である。

 

 

 

 

 

4000字ぴったり!!
(以下必読)
さてと、ここで3人の外見、状態についてまとめておこうか。

☆穣子
・姿は外になく、早苗の中に『精神体』として入っている。実はすでに外に出れる状態(出たら素っ裸だけど)。
・服は早苗さん持ち。どっこも血みどろ。月の光が反射してやや見えやすい(ただし森の中だとあまり光が差し込んでこないのでそうでもない)。
・よく見ると服に不自然な縫い目が見える。かなり目利きが利かないと分からないくらいの微妙さだけど。
・汚れによるダメージ中。

☆衣玖さん
・両脇腹からそこそこの出血、左肩からかなりの出血、右腕に違和感。少し砂埃が目立つ。
・左肩は激しく動かすと傷が開く恐れ。脇腹は大丈夫(傷跡はある)。右肩は次回こちらが書き終わった時点で完治(予定。無茶したりもっかり損傷したりしたら別)。
・ノーパン。
・勿論脇腹と左肩のとこは破けてます。

☆早苗さん
・胸からスカートにかけてかなりの血の跡(穣子のもの)。怪我はなし。
・汚れによるダメージ小。

☆その他補足
・早苗は穣子を体に宿している間は、霊力がかなり強くなっているので汚れの影響を受けない。また、早苗の性能がEXキャラ並に強化。あまり力を使いすぎると穣子に影響が出てくる。
なお、穣子を外に出すとこれらの効果は消える。
・スイートポテトルームは結界と同じようなもので、動きながらの使用は不可。
・衣玖さんの歩き方が何となく不自然。特に飛ぶことをためらう(バトル等の仕方のない状況は例外で)。

以上、なんかたくさん設定が後付けされたけど、よろしく(こいつ)!!


(以下お好みで)
後書き。
今回は話の繋ぎ。そろそろ皆で妖夢退治に行きますかい。…かなり設定をこっちで作ってしまった気がして申し訳ない。
わーい全員が血みどろになったよ!メディこんなのに出会ったら発狂しちゃうよ!フランとかは美味しそうってよだれ垂らすのかな。いや、神の血だから、神聖なものに弱い吸血鬼にはそーでもな…
…はっ!つらねちゃんとこのフランちゃんそういうの大丈夫だった…!!
と、あまり他の人のキャラを出すのはよくないな。こんなもんでストップストップ。

さてと。行動に早苗ちゃんが加入したわけで…早苗が入っただけでこのギャグっぷりな!!何これ怖い!!早苗すげぇ…お前すげぇよ…あの殺伐と、シリアスな空気を彼女一人でこんなにも変えてしまう…早苗さん怖い!!

 

おまけ。そのころの雷鼓さん。

雷「…お…おなか痛い…!!」

ア「うん…あんなもの食べるから…」

雷「だって!だってあれは衣玖がわたしを思って作ってくれたんだもん!残すことなんて出来ない!!」

幽「(フチに付いたものを食べて)…これは卵の殻と酸が反応して何か化学変化が起きた味ね。」

ア「何で分かるの!?」

レ「そして平気!?」

幽「何回うっかリスに食べさせられたと思ってるの!そりゃ慣れるわ!」

レ「慣れないでそんなものばっかり食べてたらお腹壊すから!!」

リレー小説 Ⅶ

※これはつらねとキバりんの二人で行っているリレー小説です。

第六話→http://sakura29.hatenablog.com/entry/2013/08/20/193134

 

 

「さーて。この森で何が起こってるかは分かったんだけれどね…」

森の中で一番高い木の天辺に登り、疲れた様子で一つため息を付いた。

森に漂っている嫌悪な空気も、ここまで来るとかなり楽になる。ときどきここに来て休むことにしていた。

ただ、早く解決しないといけないという使命感も同時にある。

(…あたしでこうなるのよ。これじゃあ、みのりんは…)

一つ頬に冷や汗をかく。妖怪の山の森は、夏であるのに気味が悪いほどに寒かった。

  ・
  ・

一方、穣子達はひたすら森の中を歩き回る。途中幽霊に出会ったりしているはずなのに、二人にとってそれは眼中に無かった。

紙に簡易的な地図を作る。それは記号化されていて、他の人から見ればただのミミズがはしったような落書きである。

「方角…そっちが北で大丈夫?」

「はい。これで大方の地形は予想されるかと思うのですが。」

上から衣玖が舞い降りる。彼女には星を読んで方角を確認してもらっていた。

分かったことは、北に行くにつれて高度が上がり、南に行くにつれて高度が下がる。

また、南西に行ったところに大きな崖があり、降りてみたところかなりの高さがあった。

それから、数本川が流れている。が、これは大した川幅ではない。しかし山の川ということもあり、流れる速度は早かった。

「…そうだね。こんなもんか…」

「…あの。そろそろ一旦休みませんか?顔色酷いですよ…?」

じっと穣子の顔をのぞき込む。心配性だなぁと苦笑を漏らすが、誰から見ても無事には到底思えない。

冷や汗は先ほどよりも酷く、体を震わせる。静かにすれば、荒い息も聞こえた。

「休んだからって治るもんじゃないよ…っと。それで、そこにいるの。いい加減出てきたら?」

「…!?」

穣子のその言葉に、衣玖は思わず身構える。しかし誰の姿も見えない。

そこで穣子は足下から手頃な石を一つ手に取り、茂みに投げ入れる。コンッと軽い音を立てて不自然に跳ね返ると、そこから銀髪の女の子が現れた。

それは、この二人もよく知っている人。

「よ、妖夢さんっ!?」

「…あれー、こんなところで何やってんの?」

穣子もこの正体は予想出来ていなかったのか、呆気にとられている。

その言葉に、妖夢は首を傾げた。

「…早苗、妖夢なんか連れてきたのか…」

「…?あ、えっと、妖夢さん。良かったら一緒に行きません?この森本当に幽霊が居ますし…一人では危険だと思うのですよ。」

「え。」

衣玖のその誘いに、思わず穣子が驚きの声をあげる。しかし、対する妖夢は首を振った。

「……」

そうですか、と少しがっかりする衣玖。それじゃ、行こっかと穣子が衣玖の背を押した。

妖夢に背を向けた、その刹那。

「ーっ!!」

「っ?!」

ぐっと穣子が衣玖をひっぱる。その直後、衣玖が先ほどまで居た場所には刀が振りおろされていた。

突然、自分の知っている者がおそってきた。その現実が脳内で受け入れられず、狼狽える。

が、穣子は最初から知っていたのか、焦る姿は一つとして見せなかった。

「…ダミーのダミーか…目的は?」

「……」

タンッ!

軽くジャンプをし、衣玖に瞬時に接近し、刀を振る。

状況が把握出来ていない衣玖はそれに気が付いても避けることができず、

「っ…ぅっ…!?」

「衣玖さんっ!」

急所は避けたものの、左肩に大きな傷を負う。衣玖は妖夢を強く睨みつけて訴えかけた。

「…待ってください!妖夢さん、何でこんなことを

「衣玖さんっ!それは妖夢じゃない!」

いきなり何を言い出すのか。衣玖は思わず穣子の方をむく。

その一瞬、妖夢は再び踏み込み、衣玖に狙いを定めて連撃に入る。予想ができた穣子は衣玖の手前に入り、妖夢の腹部をめがけてスペルカードを放つ。

「秋符『狂いの落ち葉』!!」

鮮やかな落ち葉に似た段幕が直撃し、大きく後方にふっとばされる。

姉のスペルカードだったが、早苗の様子を見て何かあると思い、姉に借りていた。お守り程度に考えていたが、意外と役に立ってくれた。

「…西に逃げるよっ!こんな中じゃあたしたちが圧倒的に不利!無策で勝てるはずがない!」

こくりと頷くと、ひるんでいる隙に西へ走り出す。いくら満月といえど、視界が悪いのには変わりない。

対して、向こうは幽霊であるせいか、そんなものお構いなしだ。刀を振るうのに木が邪魔になるかもしれないが、そんなもの彼女にとって障害物でも何でもない。

ただのおまけで切れている。そんなものだった。

「…走れるっ!?」

「そちらこそっ…」

ポタポタと血が地面に滴り落ちる。痛くても妖怪にとってはまだ軽傷の方だ。

対して穣子は外傷こそ無いものの、森の汚れのせいでかなり体力を消耗している。走れないとすると、俄然穣子の方だった。

背を向けて走り出す。しかし、すぐに追いつかれてしまう。

「早い――!!」

「あたし達が遅いだけだけどね!」

しかし、実際に彼女は早かった。二人の足が遅いことも相重なり、その距離はすぐにゼロとなる。

素早く暴れる刃物。辛うじて避けるものの、何度も身を掠め、あちこちに小さな傷が出来た。

「…?」

その中で、穣子は一つの違和感に気が付く。

その刹那の納得。小さく、誰にも聞こえない声でぽつりとつぶやいた。

「成る程…目的はあたしで、衣玖さんは邪魔者、か。」

刀を振るい、掠め、距離を詰める。

その繰り返しだったが、狙ってくるのは衣玖の方だけだった。

何を目的に。彼女にはそれが分かった。

分かったけれど、どうすることも出来ない。

一人だけでは、彼女の欲…いや、願望を叶えることが出来ない。

けれど、逃げなければ衣玖は間違いなく助からない。

「…っ穣子…先に逃げてっ…!」

くるりと向きを変える。襲ってくる銀髪の少女に対し、戦闘体勢を取った。

逃げてばかりでは、二人ともやられるとでも思ったのか。

「ばっ…!何やってんの!?」

妖夢の刀をドリル状にした羽衣で受け止める。高く飛んで、下に向かって一つの弾を飛ばす。

「電符『雷鼓弾』!!」

その後を負ってきた妖夢に打ち出された雷の弾がぶつかると共に、四方に電気が流れる。

地面に強く叩きつけられる音がし、当たったと確信した。

が。

「…っ!?」

牽制し、地面に着地したのが正しかったのだろう。すぐに飛び上がり、鉛色の刃物が衣玖を襲う。

予想していなかった彼女の動きに対応出来ず、辛うじて身を翻すも脇腹に刀が食い込んだ。

「くぅっ…!」

「実符『ウォームカラーハーベスト』!!」

空中で頂点に達し、その一瞬動きが止まったと同時に穣子も飛び上がって妖夢に段幕を放つ。

すぐに刀を乱暴に引き抜き、その段幕を避わす。衣玖に当たらないように計算されていて、落ちてきたところを穣子が受け止める。

霊力を使い、一瞬だけ自分の力を引き上げる。地上に下ろすと同時に、その力を止めた。

しかしその同時に再び妖夢が踏み込み、刀を振りあげる。

「っ!」

地面を転がり、右に避ける。が、

そこにあったのはもう一本の刀。忘れていたわけではないが、先ほどまで一本だったため考えていなかった。

「ぐっ、あ、ああぁっ!!」

もう片方の脇腹に深く刺さる。傷から、口から大量の血がこぼれる。

乱雑に刀を振りあげ、とどめを刺そうとする。

「豊符『オヲトシハーベスタ』!」

その目の前に穣子が現れ、至近距離から放たれる段幕。

その弾を切り、避ける。一つとして当たらなかったが、それでよかった。

単純な目くらまし。相手が避けている間に、再び霊力を使って力を底上げし、衣玖を抱きかかえて後方に飛び、再び逃げる。

「…穣子…そっち…は…」

「わかってる!ちょっと黙ってて!」

間に合うか間に合わないか、ギリギリの賭。

ヒュンッと刀の音が近くでし、一本の木が倒れる。その木を避け、たどり着いたのは…

「…ふふっ、この鬼ごっこ、あたし達の勝ちみたいだね…!」

くるり妖夢の方に体を向ける。ほとんど距離は縮まっていた。

スピードが遅くなったのを見計らい、大きく横になぎ払う。それを見切って、後方に飛んだ。

後方、そう、

「…暗い夜は、足下にご注意を。」

――崖の谷間へ。

その声が聞こえた瞬間、妖夢は姿を見失う。

が、そのしばらく後に聞こえた大きな衝突の音。それで、彼女らがどうなったかは容易に想像できた。

「……」

何も言わず、背を向ける。

血の付いた刀が、残酷な色を帯びて輝いていた。

 

 

 

 

 


せんせー、空気の読めないわんこが皆ギャグ書いてる中でバトル書いてまーす。

雷「ちょっと衣玖、妖夢ってやつころころしていいか?」
衣「ダメです。」
雷「じゃあぬっころ。」
衣「同意語でしょう?」

3307文字!学校の行き帰りで書いたっ!!
というわけでネクストキバリンよろしくっ!

 

 

おまけ(というか、感想?)
何ていうか、すっごいバトルモノ書く練習になった!ここまでバトルバトルしたもの今まで書いたことなかったわ…
バトルの描写、SEADN様(こんなスペルだったか?)みたいにスピード感を出せるようになりたいな。バトル描写はあの人を一番尊敬する。

そして。やっぱり重傷いいね(( !

あと思ったのは、雷鼓さん携えてたら展開絶対変わったんだろーな。早苗側に居ても面白かったんだろーな。こう、劣勢になってるところにすかさず割って入って撃退する雷鼓さんとか。
残念ながら書き始めたのが輝針城の製品版発表前だったからな。でも犬的にはこっちの展開が書きたかったので満足。