犬小屋という名の倉庫

主にうごメモ、写真を乗っけるように使います。主に使うブログはこっちじゃないです。

リレー小説 ⅩⅨ

本館はちょっと違う話やってるからね。

やったぁあああ19踏めた衣玖さぁぁああああ((ごめんなさい

18話 http://sakura29.hatenablog.com/entry/2014/07/23/162740

 

 

 

 

『早苗…来るまでの時間は。』


「…4…いえ、3分ってとこね。」

時間は残されていない…というより、どう考えても足りない。今こうして意見を出し合っている間にも、あの哀れな半霊は近づいてきている。その差をわずかにでも縮めようと走り出すが、余分に稼げて30秒といったところか。

「け、結界を作るのにかかる時間は…」

「強力なのを用意するから…みのりんの力を借りたとしても、15分はいるわ。それも、2畳が限界。ただし中に留めるのは1分で大丈夫よ。それも、総計で、ね。ってことで、時間稼ぎ、頼めるかしら。」

『……』

行かせたくない。多分、穣子の本心だろう。信頼していないわけではない。ただ、力の差を見せつけられている以上、その間持つか、分からない。

しかし、この場で時間稼ぎができるのは衣玖しかいないのが事実。途中から他の仲間が気が付いて彼女に加勢するかもしれない。でも、それはいつになるか分からない。

その間に、衣玖が傷つき、最悪死ぬかもしれない。だからこそ、穣子はその一言が、本心が言えなかった。

「…穣子。」

対する衣玖に、恐怖心は無かった。自分がどうなるか分からない。まともにやり合って勝てないのは分かっている。

それでも、守ってくれた、愛しい人を今度は守りたいから。

「行かせてくれますね?」

『…全く、いつの間に君はそんなにバカになったんだか。』

やれやれと、ため息をつく。少し嬉しそうなトーンで、

『…行ってらっしゃい。待ってる。』

それだけを、言った。

その一言を聞くと、くるりと走っていた方向を向く。行ってきます、そう小さな声を二人に託し、森の闇の中へ消えていった。

「…大奇跡『八坂の神風』遅効性バージョン。戦い出すと同時に発動するようにしといたわ。さっ、あたし達もグズグズしてられないわ、さっさと終わらせるわよ!」

『早苗。』

脳内に響く声が、こちらも何かしらの意志を抱いたように、強く呼びかける。

『何があっても、成し遂げてね。』

「…勿論よ、あんたにとっても、あたしにとっても、あの人はかけがえのない妖怪だもの!」

皆の気持ちは変わらない。

その想いを抱いて、風と豊穣の神は霊力を込め始めた。

 

 

逆走して本当にすぐだった。

「…!雷符『雷鼓弾』!!」

目の前からやってくる陰に、雷の玉を発射する。向こうのスピードから回避は不可能だろうと思ったが、そうは行かなかったようだ。

「……」

「…刀を避雷針にして避けましたか。やはり分が悪いのは私の方ですね。」

自分の前に投げられた刀を見つめてぽつりと呟く。発弾と同時に手前に投げ、地面に刃を突き立てて自分への直弾を防いだのだろう。持ち主はそれを乱雑に引き抜くと、構えてじっと緋色の妖怪を射抜いた。

殺気。合わせれば、殺されてしまいそうな。それでも逃げることなく、その瞳を睨んだ。

刹那、動く。素早く振るわれる鉄の塊を、衣で受け止める。キィイインと、甲高い音が森に響いた。

「――っ」

もう一刀。体を捻って回避し、空いた横腹に一撃蹴りを浴びせる。が、予想されていたその動きは簡単に回避され、再び振るわれた。

受け止め、受け流す。倒す必要は無い、時間稼ぎさえできれば。しかし、受け止めてばかりいては、相手の攻撃が激化する一方。何とか隙を付いて一撃を入れようとするも、ことごとく回避されてしまう。

「…っ!羽衣『羽衣は空の如く』!」

大きな動作の攻撃が来る。そんな時、相手の体制を崩すためのスペルカード。無条件にひらりと武器をそれさせ、その背後に回り込む。一瞬の動きに、相手はついてこれない。

「魚符『龍魚ドリル』!」

その背後から、持っている羽衣で貫く。これは流石に避けられなかったようで、綺麗に背中に命中した。

吹っ飛ばされ、数メートル先で2、3回ほど地面に体をぶつける。普通ならば少しくらいは動けなくなるはずだ。

だが、

「…分かってましたが、やはり平気そうですね。」

ゆっくりと立ち上がり、再びこちらに向かって飛んだ。

痛覚が無いのか。そう錯覚させられる。殆ど効いていない様子で、流石の衣玖は苦笑せざるを得なかった。

「…っ!!」

「くっ……」

先ほどよりも鋭い。相手も少しばかりか本気を出さないとやられるとでも思ったのだろうか。

先ほどの強さで、まだ手を抜いていた方。絶望的なそんな状況。だが、屈するわけにはいかない。

(二度も同じ手は通用するとは思いません)

自分が空中に出て、得意な地形で対抗するか。一瞬考えたが、すぐにやめた。

とても追ってくるとは思わない。自分は彼女の獲物ではない、ただの邪魔物なのだ。

舞台上の姫を狙う盗賊に、騎士など居てもせいぜいやられ役でしかない。

だったら。

「羽衣『羽衣は時の如く』、」

盛大に、やられ役として、あがこうではないか!

「珠符『五爪龍の珠』!」

武器を羽衣で絡め取り、そこに強力な雷を流し込む。手を放さなければ、高電圧の雷に身を焦がすことになる。

ここでの衣玖の行為は武器を奪うことだった。厄介な2本の鉄の棒。それの、片方だけでも奪うことができたなら。

手放すしかない、そう、勝手な決めつけだった。

「な――」

衣玖の行動に反した。それは、常人ではとてもできないこと。

そう、構わず、押し込んだのだ。

「ーーっ!!」

身を貫かれる。とっさに回避行動を取ったので急所は免れたものの、深く左太股に刺さってしまった。

血しぶきが宙を舞う。激痛が走る中、それでも衣玖は

「至近距離なのは私もです!魚符『龍魚ドリル』!」

カウンターの如く、自身の武器で小柄な体を振り払った。

ダメージを与えるためのものではなく、あくまで強い衝撃を与え、引き剥がすもの。狙いは太股に刺さった刀だった。

「…ふ、ふふっ…これで貴方の武器、一つは奪いましたよ。」

だくだくと流れる血に構わず、それを引き抜く。尋常では無い量が溢れだした。

持っていても扱えないし、射したままではいずれ奪われる。

だったら。

「羽衣『羽衣は時の如く』。」

捨てればいい。

宙を、高く、高く舞う。暗闇に溶け、何処に落ちたかとても分かりそうにない。

探しにいっても、いかなくても、狙い通りだ。探しに行くのならその分十分な時間が稼げるし、行かないのであればその分戦力が落ちる。

「っ……!」

流石に逆鱗に触れたか。一本の刀を強く握りしめ、再び衣玖の方を向く。心なしか風が強くなり、木々がうるさくざわめく。

そんな中立つ少女は、まるで、鬼神のようであった。

(左足を捧げたのは流石にまずかったですね…)

とても動きそうにない。無理して酷使することは辛うじてできなくもないかもしれないが…何はともあれ、引きずるように飛ぶのが精一杯だ。

しかし森の中では、小型の生物にとっては有利になるだろうが、人間くらいの大きさになっては邪魔で仕方がない。

だが、移動手段はそれしかない。動かなければ、自分は殺される。

「っはぁああああっ!」

右足で、地面を強く蹴る。いける。何とか動ける。

刀と衣がぶつかり合う音が激しくなり響く。一つの音楽のように、美しく、鋭く、不気味に、森に響く。

時折響く雷鳴の音。戦の旋律は、激しく、高揚し、激化していく。

振るう、ぶつかる、避ける、鳴る、蹴る。

乱れない、その音が。

「――っ!」

ふいに、途切れた。

「……?」

半霊が大きく後方に飛ぶ。距離を詰めようとしたが、何か違和感がある。羽衣を構えたまま、じっと相手を睨みつけた。

刀を静かに構える。いや、静かながら、何か恐ろしいものを纏っている。一本の刀に禍々しい力が込められる。

何か、仕掛けてくる。多分、止められない。

なら、先に。

「龍魚『龍宮の使い遊泳

 

風が、強く、強く吹いた。

 


「……」

もしも、その場所を通る者が居るのであれば、その惨劇を嫌でも知らされることになるだろう。

「……の…りこ…」

半霊の、力というものを。

 

 

 


『…!』

不意に、嫌な気配を感じた。それは穣子だけでなく、早苗も同様だった。

近づいてくる。しかし、この場を動くわけにはいかない。作りかけの結界を壊すのなら話は別だが。

『…どのくらいできた?』

「そうね…3分の2は終わった…けど、どう考えても、」

間に合わない。すぐそこまで来ようとしている。一応正しい操作を施せば、途中の状態でも安定したまま放置はできる。ただ、あの半霊が見つけてそれを壊すことは大いにあり得る。

霊力にはまだ余裕がありそうだ。それなら、これを犠牲にする覚悟で、保存の為の手順を施してもいいかもしれない。

「…中断させるわ。大丈夫、すぐに終わ――」

る、の声は風に消された。

『…!』

「な、早い…!」

自分が予想していたよりも、それは何倍も早かった。

少なくとももう少しは時間があると思っていた。浅はかだと思う時間も与えない、抜刀され、赤く緋く光刃。

「…無理、ね。これ、中断できないのよ。」

流石の風の神も、こればかりは腹をくくる。

『…早苗。』

こちらを睨む。鬼をも震え上がらせる、冷たく、冷酷な瞳で。

とても、間に合いそうにない。

速い刃がゆっくりに見える。酷く、長いように思えた。

『…後は、よろしくね。』

「――!!」

穣子の、消え入りそうな声で我に返ったときはすでに事後だった。

気が付けば半霊は後方に吹っ飛ばされていた。夜目が効く早苗だからこそ分かったが、刀にはヒビがいっていた。

「まさか…穣子?」

術式は終わっていた。中断できる状態だ。

しかし、求めた声の主の返事が無い。

体が、重たい。

「…穣子…!あんたまさか…!」

ふと思い出した。彼女の言った、「何があっても、成し遂げてね。」という一言。

これは、この事態を初めから予想していたのではないか。

初めから自分は、神としての死を辿るつもりだったのではないか。

「…るさない…あんたは…あんたは絶対に…!」

先ほどとは別の風が吹く。優しくも、悲しい神風が。

その風には、実りの奇跡は無かった。

 

 

 

 

 

3932文字!私なんて殺したい症候群なんだろうな!!

因みに語ること多分ないだろうから、ここで。衣玖さんは死ぬような大けがを負いつつも、生きてます。みのりんが早苗の力を少しだけ借りて、『最期の奇跡』を起こしたといった感じです。ほっといても一応生きてますけど、血みどろで全身傷まみれでぐったり横たわっているので誰か救済してあげてください;;

え、起こしてなかったら?死んでます死んでます。まぁ…よかったね衣玖さん!

ちょっとはかっこいいとこ見せれたよ!みのりんの頑張りでものすごく曇って見えるけどね!!

あと早苗ちゃんや衣玖さん勝手に動かしてくださいね。もうそろそろ合流しないと書けないと思うので…あ、早苗瀕死にさせたい?どーぞどーぞ((

裏話をすると。衣玖さん取り逃がす設定だったので、初期案では瀕死になる予定なかったです。しかしそれじゃあ、ちょっと衣玖さんがほんっとーにダメな大人になっちゃうなーってことで、急遽。

まぁ、みなさんとこが強いので、私のとこはこうやって弱いを演じようということで。実際みのりんはボスキャラの中では最弱設定にしてますしね。忘れちゃダメよ!!

あと、これ。半霊ちゃん、喋るつもりで私いました(今回喋らせてないけど)wこの辺本当自由にやっちゃってね!

 


おまけ。そのころの雷鼓さん。

雷「うん?なんか妖怪の山の方が騒がしい?」

レ「あーそうね。何となく音が聞こえる気がするわね。」

幽「私には分からないわ。よく分かるわね。」

雷「私は耳には自信あるからな!それにしてもいい音楽だな…♪~(チンチンドンドン)」

幽「食器で遊ばない!箸でお皿叩かない!」

レ「でもこれ、リズム凄くいいわ…(ドンドンパンパン)」

幽「ちょっとレティあんたまでっ…ああもうっ、私もノッてきちゃったじゃないのー!!」