犬小屋という名の倉庫

主にうごメモ、写真を乗っけるように使います。主に使うブログはこっちじゃないです。

東方リプレイ1-3 『緋の風が妖しく輝き』

アレトゥーザから帰ってきて5日ほどたった現在。


「ふーん、ゴブリン退治で600spは美味しいわね。親父さん、これ受けてくるわ。」

「ちょっと待てや。」

交易都市リューンにある冒険者の宿、双牙亭。早苗やその先輩方のチームが所属している、やや小さめの冒険者の宿だった。

実は常駐している冒険者はいまこの2組しか居ない。流れものと普通の客が大半を占めるせいで、これだけで事足りてしまうのだった。

「お前等、3人しか居ない上、そいつ戦えるかどうか分からんだろ。ちょっと危険じゃないか?」

「大丈夫だって。あたしたち全くの駆け出しってわけじゃないし…それに、衣玖さんってどうも戦闘民族だったみたいなんだよね。」

「金髪でスーパー化するのかんなアホな。」

実は、アレトゥーザから帰ってきて、早苗がすぐに衣玖を街外れにつれていき、戦えるかどうかを見てやったのだ。

「お前記憶なくしてるやつに無茶させるなよ。」

「あたしのカンがこいつは出来る子だって、言ったから。」

「出た、相変わらずの無茶苦茶な理論。」

するとどういうわけか、適当に渡した剣をそこそこ普通に扱えてしまったのだ。
多分、記憶を無くす前に何か仕込まれていたのだろうが…分からないから、とりあえず戦闘民族ということにしておいた。

「大丈夫よ。まな板にみっちり剣術指導しておいてもらったから、いける。」

「あいつの指導で大丈夫か。」

「……」

「……」

「いや肯定してあげてくださいよ。」

まな板、それはこの宿の早苗たちのもう一つのベテランチームのリーダーを勤める妖夢という冒険者。女剣士で、剣術なら右に出る者は居ない。ただ一つ、問題があった。

「いやだって、こう、リーダーって威厳がないっていうかさ。胸とか。」

「ないよね。胸とか、身長とか、胸とか、騙されやすさとか、胸とか、それから胸とか。」

「やめてあげてくださいよそんなに胸胸言うの。…それは…穣子よりも小さいとは思いましたが…」

そう、あまりにも胸が小さかったため、ついた二つ名が『まな板』、あるいは『レーズンオンザウォール』だった。

しかも威厳のいの字もないので、初めて依頼を頼む人は必ず「えっこんなリーダーで大丈夫か」といったリアクションをするのであった。

「…ドラゴンをも退治できる先輩チームのリーダーをまな板呼びするお前らが凄い。」

「あら、親父さんだってまな板呼びしてるじゃない。」

「ワシはあいつらが駆け出しの頃から居たから特権だ。」

(…そういえば)

ふと、衣玖は疑問に思った。この宿では拠点にしている冒険者が少ないということだからか知らないが、あまりにも上下関係が無さすぎる。どのくらい無いかって、タメ呼び捨て、遠慮を知らない、時々命令する、挙げ句にまな板呼び。

何というか、変な光景だった。他のところでもこんなものなのだろうか。と、あれこれ悩む衣玖の横で、段々依頼の話は進んでいくわけで。

「さてと、無駄話はこのくらいにしよ。無理そうだったら諦めて帰ってくるから安心してよ。」

それもそうね、と早苗もようやく席を立つ。不安要素を残しながらも、衣玖もそれに続いた。

その背中を見て、親父は一つため息をついた。

「…衣玖だけが知らない、か。ここの常駐パーティの実際の姿ってやつを。

…あいつらは話すつもりがあるんだかないんだか…」

 

  ・
  ・

 

「さて、あたしは大変な事実に気がついたわ。」

「リーダーが決まってないんだよね。」

リーダー、それは勝利への指導者。リーダー無しにはパーティは成り立たない。

今まで二人だったがために意識しなかったが、まぁ、もうこれは自動決定のようなものである。

「ってことで頑張ってね衣玖さん!」

「ファイト衣玖さん!」

「待ってください、なぜに私なのですか!?早苗さんではないのです!?」

「いやぁあたし、役職盗賊だから。」

早苗が調査役兼解錠役、穣子が参謀役、すでに成り立ってしまうこの事実。

と言っても、早苗は盗賊としてはかなり異端な盗賊である。何というか、盗賊らしくない。盗賊のくせに白という明るい服を着、聖北の術を扱い、精霊や神といった清らかな存在との親和性がずばぬけ高い。しかし観察力、罠や鍵の解除能力は他の盗賊よりも下になる。

まぁ、本職は巫女だから、巫女が盗賊をやってるっていう方が変な話なのだが。

「あ、あの、でも、私こういうのよく分からなくて…」

「だいじょーぶ、後押ししてあげるから。ひとまずは気楽にやってていいよ。記憶無くした人にそんな初めから無茶を言うつもりは無いさ。」

ぽんっと、背中を軽く叩く。まだ不安そうにしているが、小さくはい、と答えた。どうやら折れたようだ。

「そんじゃ、早速…見張りのゴブが居るんだけど、どうしたらいいかしら、リーダー?」

と、早苗が指指したところにはぽっかりと開いた洞窟。そして、緑色の肌をした妖魔の姿があった。向こうはまだこちらに気がついていないらしい。

「…気づかれないようにしなければいけないのですよね。…早苗さん、背後からしとめることは出来そうですか?」

「ちょっと自信無いわね。茂みが深くて、音を出さずにあれを殺のは…言われたらやってみるわよ?」

「いえ、できれば確実な手で…おびきよせるというのは?」

「人数が少ないから、非推奨かしらね。一気に叩かないといけないから、3人で仲間を呼ぶ暇もなしに倒せるかしら?」

うぅむ困ったというように、すっかり悩んでしまっている。その様子を見ながら、早苗は口端をややつり上げた。

「…穣子、助けてください。」

「あたしなら遠距離攻撃で倒すね。あんな感じに。」

そう言って、ちょいちょいと先ほどのゴブリンを指さす。見事命中して伸びているわけで。

「…指示出す前に殺りますか!!」

「あんまりにもじれったから殺っちゃったテヘペロ!!」

早苗と穣子は冒険者をやって半年くらいにはなる。衣玖と比べれば、こういうときの対処方はしっかりと身に付いているわけで。

「まま、今のうちにそういうことは考えてた方がいーよ。これから問題児が増えるかもしれないんだし。」

「は?問題児…?」

「いや、こうね、うちの宿は問題児が集うことで大変有名なのよ。常識人あたしくらいよ?」

「君が一番非常識人だよ。」

巫女から盗賊にジョブチェンジ。癒身の法を使う盗賊なんて聞いたことがない。闇に隠れる気がない盗賊も盗賊としてどうかと思う。

「と、兎に角進みましょう!あとお願いですから、指示を出してから行動してください!」

「はーい出来るだけ慎むねー。」

全く反省の色が見えない。大丈夫かよこいつら。

早くも衣玖は自分がリーダーじゃない方がいいのではと思い出してきた。

 

 

 

 

大丈夫かよこいつら、といいたくなるほどのこの自由な二人。自由すぎて怖い。

設定上、早苗と穣子はレベル2(経験値2点)からリプレイスタートさせてます。じゃないと衣玖さんの方がレベル高いって矛盾が起こるからね…!

それと、初期技能だけ。

早苗…『癒身の法』、『白昼の客星』

穣子…『魔法の矢』、『穀物神の約束』

 

オリ(東方の弾幕なんだけど)効果説明

『白昼の客星』…レベル4技能。全体に神聖魔法攻撃。アンデットに対して結構な威力を出すものの、そうじゃない場合かなりダメージは低め。どのくらいって。レベル2でバットが倒せるかどうかってぐらいだったような。

『穀物神の約束』…レベル2技能。麻痺、中毒、沈黙を完全に治療できる。が、体力に関しては『癒身の法』より回復量がやや劣る。因みに霊力を分ける、という設定ながら、相手の力の性質に変化するという特性を持つ(いつか本館で出したい設定)ので、幽霊とかに使っても大丈夫…なんだけど、相手が近づくだけで嫌悪感とか覚えるからやっぱり微妙。

 

 

著作権

シナリオ

『ゴブリンの洞窟』 Ask様

技能

『癒身の法』、『魔法の矢』 Ask様