犬小屋という名の倉庫

主にうごメモ、写真を乗っけるように使います。主に使うブログはこっちじゃないです。

東方リプレイ1-1 『緋の風が妖しく輝き』

役目だから。その言葉に縛られて、自分を殺して。


何度焦がれたか。自分の定めに縛られない生き方に。


しかし、鎖で縛られたかのように、自分が望む外に逃げることはできなくて。


…天命に逆らうことなど、出来やしない。

 

ー『緋の風が妖しく輝き』ー

 

「というわけでやってきましたアレトゥーザ!毎度おなじみ、東風谷早苗が海の模様をお送りいたします!いやぁ何度みても綺麗な海ですねーこのまま泳ぎに全裸になりたいですよ!」

「…早苗。現実逃避は見苦しいよ?」

アレトゥーザという、海が主要となっている美しい街で、二人のリューンの冒険者の東風谷早苗秋穣子が浜辺にやってきていた。

早苗は美しい緑色の長い髪の毛に、長身でスタイルはとても良く、白と青の巫女の服をしている。名前からしても東の国の出身だということが分かる。

穣子の方もこれまた東の国出身。金髪で幼く身長も低い、まだまだ子供だった。赤いエプロンに黒いスカート、また葡萄のついた帽子を被っており、見た目がとても秋色である。

というのも、彼女は豊穣の神であり、秋に関する穀物を担当している。周りには隠しているので、基本的には人間という種族で通している。

因みに神といっても力はごくごく小さい。八百万の神なんてそんなものらしい(その中でもかなりの下位に入るそうだ)。

「…だって、ただの食材探しよ?冒険者が食材探しよ?もっとこう、派手な仕事がしたいじゃない!」

「駆け出し冒険者なんだから、荒事は全部先輩達に任せてりゃいいよ。そもそもまだあたし達は二人しかいないんだし、無理っしょ。」

この二人はリューンのある有名な冒険者にお世話になっている。そろそろ独立してチームを作ってもいいだろうということで、仲間集めを地味に行っていた。

…今回はその先輩冒険者がアレトゥーザに依頼をしに行くというのにくっついてきただけで、依頼そのものには関わらない。というより、関われるレベルの依頼では無かった。

流石にその辺はわきまえているので、帰ってくるまで小遣いを稼ぐためにこうやって潮干がりをしていようという穣子の提案。取ったものは宿で買い取ってくれる。それを早苗がしぶしぶ承諾。で、今現在に至る。

「でもいいわよねー経費は先輩達が持ってくれてさー。いやぁ太っ腹太っ腹。」

「一週間もかかる旅の経費負担とかありがたすぎて涙出ちゃうよね。…お酒は自重しようね?」

「あんたもね?」

「あたし人前じゃ飲まないから。」

酒豪二人組。ただし穣子は子供なので、人前では我慢している。神なので飲んでも何ら問題は無いのだが、周りが『子供だからやめとけ』と言うのだ。

隣で美味しそうに酒を飲む早苗に殺意を抱いたのは一度や二度ではない。

また、先輩方は種族を知っているので、部屋でこっそり飲み会を開いて招いてくれたときは遠慮なしに飲む。またその量が凄いので、会計担当が毎回白目になるのだ。

「この間泣いてたわよ。酒で報酬以上の金が消えたって。」

「早苗も割と人のこと言えないでしょ。2升瓶飲んでも平気な早苗が珍しく酔って全裸になってたんだから。覚えてないだろうけど。」

「え、覚えてるわよ?暑くなったから脱いだ。別に普通でしょ?」

「……」

ダメだこいつ、早く何とかしないと。

てっきり酔っぱらって脱いだのかと思ったら、自分の常識の元脱いでいた。流石にこれには穣子も言葉を失う。

「…うん。そっか。もう何も聞かない。」

「えー何よーみのりん冷たーい。」

ほらそろそろ手を動かせ、と自分から魚介類を探し出す穣子。少し不満そうな表情で、早苗もそれに続いた。

もうどっちが子供でどっちがお姉さんなのか分からない。

「…今思ったけど早苗って何歳だっけ。」

「18。」

「…未成年、だよね?」

「四捨五入したら20だから、いける。」

ぐっと親指を立てて、更にそのままウインクをしてみせる。最早穣子にツッコミを入れる気力は無かった。

早苗はスタイルが本当にすばらしいので、正直大人に見えても何も不思議ではない。不思議でないから余計に困る。

「…分業しよっか。こっちやるから、早苗向こうお願い。」

「うわついに視界に入れたくないと来た。」

しばらく黙ってろという意味の方が正しい気もするが、あながち間違っていないのでそのままスルー。

早苗も早苗で穣子の提案を素直に飲む。ぶつぶつ何か言っていたような気はするが、それは聞こえないフリをした。

「…それにしても、この間のことが嘘みたいだよ。あんなことがあったのに、もう気にしてるのはあたしだけ、か…」

ぽつり、呟く。早苗には聞こえないように、小さく。

距離があるから普通の声でも聞こえなさそうだが、それでも自然と小さくなった。そのくらい、穣子の中には強すぎる印象を与えた、ある一つの事件。

それを振り返ろうとして、ふと気がついた。

「…あれ、何だろ。」

視線を遠くにやる。波打ち際に、一つ大きな陰があった。どうやら何かが打ち上げられているようだ。

気になり、それに近づく。淡い桃色のふわふわとした布に、黒いロングスカート。大きさは大体1.6~7メートルといったところか。

隣には同じく桃色の長い布が落ちている。緋色のフリルが縁に飾られていた。

それはどうみても、

「…人間、だよね?」

試しに頬をつついてみる。動く気配はない。

死んでいるのかと思ったが、浅いながらも息はしており、衰弱しているものの生きていることが分かる。

「…とりあえず、気休めだけどやっておくか。」

そっと手をかざし、霊力を込める。その手から淡い光があふれだし、その人の体を優しく包み込み。『癒身の法』に似ているものの、それとは違う、彼女のオリジナルの技だった。

自身の霊力を分け与え、その霊力によって内から癒しの効果を与える『穀物神の約束』。中毒、麻痺、沈黙を癒す効果もあるが、回復量としては『癒身の法』には劣る。

ただ、傷の治し方があちらは自然治癒力の活性化に対し、力を分け与え、中から治療するといったものなので、外傷の無い人間に治癒を施す場合は便利な技である。

「…よし。顔色も良くなったし、ひとまずは大丈夫だね。後は海水に浸かっちゃってるのを引き上げて、と。」

そう言って、ひっぱりあげようとするも、そこは子供の腕力。おまけに穣子は魔術系専門なので、このような力仕事はからっきしだった。

懸命に引っ張ったところでビクともしない。分かっていただけに、いざその現実をつきつけられると思わず苦い顔になる。

「あら、何か大物拾ってるじゃないの。」

と、背後から現れたのはさっき分業を頼んだはずの早苗。早苗も力仕事は得意ではないものの、穣子ほどではない。

「…本当に早苗は困ったときにやってくるから怖いよ。レーダーか何か付いてるの。」

「持ち前の勘が…あたしみたいな美少女が神様に見捨てられるはずなくって

「何で言い直したの。ま、いいや、さっさと運んで。まだ生きてるみたいだから。」

「ほんっと最近冷たいわね…まさか反抗期!?」

「いいから早く。」

穣子の冷たいツッコミに対して相変わらずふざけたようにボケて返す早苗。その表情は笑顔だった。

肩に手を回し、何とか持ち上げる。身長がやや足りずに足を引きずる形になってしまうが、それは許してもらうことにする。

「しっかし、この身なりこの辺の人じゃないわよね…一体どこからやってきたのかしら。」

とりあえずアレトゥーザの宿に運び、そこで介抱することにしよう。その早苗の提案に頷き、後に続こうとして、打ち上げられている衣を忘れていることに気がついた。

手にとって、じっとそれを見つめる。やや魔力を帯びている以外は特に変わったところは見受けられなかった。

「…これは東洋の織り方だね。もし出身のとこがこの織り方をするところなら…あの人ものすごい距離を流されてきたんだね…生きているのが不思議だよ。」

海の遙か向こうの大地を想像する、いや、思い出す。自分の生まれた、東にある国を。

そうしていると、背後から早苗の呼ぶ声が聞こえた。はっと我に返ると、彼女の後を追いかけて走り出した。

 

 

 

 

 

タイトルの由来は本館と東方やってる人なら分かりますね。

そして訳アリフラグを回収できるのはいつの日か…そしてリューンから始まらないのね。

キャラ情報(能力とか)はまた全員そろったらで。メンバーもろバレしてるから意味ない気はしますがね。

 

 

 

著作権

『碧海の都アレトゥーザ』 Mart様