犬小屋という名の倉庫

主にうごメモ、写真を乗っけるように使います。主に使うブログはこっちじゃないです。

東方リプレイ 番外編0-2 『ネムリヒメ』

昨日の文で直した方がよかった文章見つけたけど放置((

 

 

 

 

同じ道。同じ風景。

その中の、昨日とは違うもの。

「やはり、咲いていましたね。」

昨日見つけた、一輪の花。私の睨んだ考えは正しく、今日は蕾がすっかり花開いて、仲良く二つ並んでいた。

朱色。私の緋色には遠い色。しかし、色を取れば朱も緋も同じ『あけ』になる。

この二つの朱を、私はまた穣子の姿を重ねた。

それは今までの日々か。あるいは、私の願いか。

「…一緒に行きますか?あの、眠り姫の元へ。」

頷くわけも、はいと返事するわけもない。しかし、そうですか、と一言呟き、花を傷つけないようにそっとその花を摘んだ。

今日のおみやげはこれにしよう。

 

 

「ふふっ、今日も来てしましましたよー。元気にしてますかー?」

今日は空元気で挨拶をする。やはり返ってくる返事は無い。

相変わらず眠ったままだ。私は無理矢理にでも笑顔を作り、何も挿されていない一輪差しに摘んできた花を飾った。

朱の花が少しだけ揺れる。窓辺の日がよく当たるところに置くと陶器の重たい音がした。

花も、彼女も喜んでいるように見える。

「綺麗でしょう?昨日は一つしか咲いていなかったのですが、今朝見てみると隣にあった蕾が咲いていたのです。…まるで、」

私たちみたいだ。そう言おうとして、やめた。

一方的な思いこみでしかない。穣子が本当に私のことを想っていてくれたという確信がなかった。何も気にしなくていい、それは分かっている。

分かっていても、穣子の好きの意味が分からない。分からない限り、そう言えやしない。

それに今言うべきではないと思う。眠っている彼女と私とはとても距離が遠い。

この花のような近い距離にはとても無い。互いに笑い合えない今、あまりにも酷い言葉だと思った。

代わりに。

「……これからの、私たちですね。」

これからの、それには多くの意味が含まれている。

目が覚めて、また二人で一緒になって笑える日が続くことの未来。早く目を覚まして、自分の元へ返ってきてほしいという願い。この寂しい日が、いつかは終わることへの希望。

…なによりも。

私が想いを届ける日が来て、二人一緒の気持ちになれる、その日のための、これから。

気のせいかもしれないけれど、そうだね、と笑ってくれたような気がした。

…これは、自分の妄想だろうか。

 


彼女の服を変えるために脱がせる。定期的に衣服を変えてやっていた。

同じものを着続けるのは衛生的によくない。あまり考えなくてもいいのかもしれないけれど、私なら絶対に耐えられない。

「…あら。」

その途中、今まで気が付かなかったことに気が付く。左腕のところに大きな擦り傷があった。

眠っているせいか、傷が治るのが遅くなってしまっているらしい。出血こそ止まっていたものの、その傷には膿が溜まっていた。

このまま放置するのはよくない。彼女の部屋を漁り、針とガーゼと消毒液を借りる。しばらく放置していたので、多分大丈夫だろうが一応熱消毒もしておく。どこに何があるのか完全に把握している自分が居て少し驚いた。

自分が穣子の部屋を過去に漁っていたわけではなく、いつも傍で見ていたから覚えていた。ここでたわいもない雑談をしたことも、一緒に何かを食べたこともまるで昨日のことのように覚えている。思い出の一つ一つが大切な宝物だ。

それを失うことが怖い。手からこぼれないようにしようとしても、手に持てる宝物の数は限られている。

無くしちゃったのなら、また作ればいいよ。優しくそう言ってくれたのは、紛れもない穣子だった。

「…嘘を付くのは、許しませんからね。」

充分に熱くなったことを確認して火を止める。彼女の持っている火が出る道具も、何度も作業を手伝っていると自然と使い方を覚えられた。

準備が整うと彼女の元へ戻り、膿が溜まってしまった所へ熱した針を刺す。ぴくり、と体が少しだけ反応した。

「痛いでしょうが、少しだけ我慢してくださいね。」

こういうものはちゃんと医学の知識がやった方がいいのだろうが、下手に動かせない以上私がやった方がいい。…自分がやりたいというエゴが無いとは言い切れないが。

布で流れ出た膿をふき取った後、別の布に消毒液を染み込ませ、傷口に当ててやる。寝ていても痛いのか、少し苦しそうな表情を浮かべる。

痛くても、目を覚ますきっかけとなってくれるのならば。無意識のまま、何も出来ず、そのまま死ぬしかないのなら、このくらい。

…それでも、無理だとしたら。

ーいっそ、殺してしまったら。

「…我ながら、酷いことを言います。」

稀にこういったよくない考えがよぎる。一月もこのままのせいか、相当参ってしまっているらしい。

頭を振って、その考え方を否定する。愛しい人はまだ生きている。きっと、目を覚ます。だからそれまでの間、傍に居てやろう。

もし自分がこんな状況になって、誰も居てくれないとしたら、きっと裏切られただとか、忘れられただとか思うだろう。愛しい人の姿の無い、そんな世界なんて。

…頑張れ、と自分に言い聞かせる。同じ立場になったらという『もし』を考えるだけでもその考えを否定することが出来た。

しかし、私自身は無意識のまま、何も出来ずにそのまま眠り続けることは地獄でしか無いと思う。それは死ぬことよりも、ずっと辛いこと。

だから。

「…相当参ってますね。」

少し風に当ててから、ガーゼでその傷を隠す。少しだけ手が震えていることに気が付いた。

ふと、彼女の寝顔を見る。先ほどの表情に加えて、少し陰りが見える。

…心配させてしまったか。

「ごめんなさい、私は大丈夫です。だから、貴方は、」

早く、目を覚ましてください。

 


「そうそう、昨日珍しく魚料理以外のものがまともに作れまして。」

今日も何気ない雑談を始める。今日は怪我の治療に時間がかかったため、昨日ほど話をする時間はなさそうだ。

「焼き芋が焦げることなく作れたのです。この私が、ですよ?凄くないですか?」

因みにこれは昨日帰って、雷鼓が夕食の準備を始めたとき、暇だったから焼いてみたものだ。

いつもなら食べるのをためらうようなものにしかならないのに、運良くそのときはまともな焼き芋が出来上がったのだ。雷鼓も美味しいって言いながら食べてくれた。

「…貴方にも食べさせてあげたかったのですがね。」

少し、悲しそうな声になってしまった。

とても穣子が作る焼き芋にはほど遠い出来映えだが、それでも彼女なら喜んで食べてくれただろう。

いや、焼き芋にうるさい彼女のことだから、逆に色々ケチをつけてくれたかもしれない。同じ材料を使っているはずなのだが、どうしても同じものが出来ない。

雷鼓は多分、私の本音を見通していたのだろう。本当は穣子に食べさせてあげたかっただろうな、ということはきっと分かっていたと思う。

分かっていて、食べて、美味しいと言った。

それは多分、彼女なりの気遣いだったのだと思う。届かない想いの、代弁をするように。

そんな彼女の気遣いには感謝している。それと同時に、とても申し訳なく思った。

「…久々に貴方の作った焼き芋を食べたいですね。」

そういえば、長く穣子の料理を食べていない。懐かしい、あの味を久しぶりに思い出したい。

「今度、貴方と一緒に作って食べたいです。そのときはもう一度、昨日みたいに上手く作りますよ。貴方からすればゴミ同然かもしれませんが…」

それでも、貴方に食べさせたい。いつも私の傍で笑顔を振りまいてくれる貴方に。

いつも傍に居てくれて、ありがとうって。

 

 

 

 

オリジナル色が強いです。まぁ、私がリプ書いたら大体そうなっちゃうんですよね。

あとこのコメ返事は3まで書いたらしますね。