犬小屋という名の倉庫

主にうごメモ、写真を乗っけるように使います。主に使うブログはこっちじゃないです。

東方リプレイ 番外編0-1 『ネムリヒメ』

番外編もへったくれも、って感じですが…えぇそうですよ、試し(勢い)でリプレイ書いちゃったからそれで公開するだけですよ!!

パーティは東方宿の第4パ…えぇメインブログで今ハイライト当たってるあの6人ですはい。…とりあえず、このリプレイを乗せた後にキャラ設定とかやる(リプレイ仕様の、ね?)つもりでいるので…!今はもう、適当に読んどいてくださi((

今回知らない人が見に来るのがよーくわかっているので、ざっくりと説明しておきますと、

 

衣玖さん(緋色イメージの妖怪)→穣子(朱色イメージの豊穣神)

早苗と雷鼓さんは今回おまけ

 

とだけ頭に入れていただければ、多分大丈夫です!

あとここが始めての人は気をつけて、イチャベタしない百合ですので。

 

 

 

 

今日は風が強く吹く日だった。

魔法の森へ向かう途中に、衣玖は一輪の花を見つける。更にその花は朱色で、少しだけ胸が痛む感覚を覚えた。

どこか寂しげに咲いているような朱色の花。

「…お一人…なのですか?」

花に語りかける。当然返ってくる言葉などない。

しばらく見つめていて、摘んで今日のおみやげにしようかと思ったが、そのままやめた。同じ茎からもう一本別の方向に伸び、そこに一つの蕾が付いていることに気が付いたのだ。

明日には咲きそうなもう一つの花。まるで咲いている花を追いかけるかのように、その花もついてこようとする。

そう、見えた。

 

あるおとぎ話にあった。

お姫様が悪い魔女に毒林檎を食べさせられて、深い眠りに落ちてしまう話。

そのお姫様は王子様のキスで目を覚まし、めでたくハッピーエンドとなった。

「…キスで目が覚めるのならば、どれだけ幸せなことでしょうか…」

私の、愛しい、愛しいあの幼い神様。

今は死んでしまったかのように眠り続ける、私のお姫様。

「…死んでなんか、いません。」

明日には起きる。今日は起きなくても、明日には起きる。

そう何度も何度も繰り返し、自分に言い聞かせた。

眠る前にそう呟き、昨日も呟いた言葉を、明日も呟く。

寝ているだけで、死んだのではない。

息はちゃんとしているし、爪も、髪の毛も伸びる。それは間違いなく、生きている証拠。

ただ、言葉を返してくれないだけで。目を開けてくれないだけで。

 

私は今日も、あの人に会いに行く。

目覚めない、あの人の元へ。

 

 


 ー『ネムリヒメ』ー

 

 


「…おはようございます。」

彼女の部屋に入る。いつもなら返してくれる返事は今日も無かった。

彼女は無表情のまま、目を閉じて寝息をたてることなく静かに眠る。私が来ていることに気が付いているのかどうかさえ分からない。

そんな状態が、一月は続いている。その間私は一日たりとも欠かすことなく彼女の元へ出向いた。

こうなってしまった理由は、ちょっとした崖から落ちたから。大した怪我は負わないような、小さな崖。ちょっとした怪我で済んだはずの。

そんな場所でも、打ち所が悪ければこのような状態になってしまう。それが、自分たちのもろさを露骨に表しているようで。

ちょっと注意していれば、こうならずには済んだのに。手を伸ばして、間に合っていれば今までと変わらない生活が続いていたのかもしれないのに。

皆で笑って、泣いて、幸せな時間を共に…

「……」

なんて、後悔はいくらでもできる。穣子が後悔は自分の感情を押し殺した先にあるものだと言っていたのを思い出した。

私のこれは、後悔ではない。仕方の無かったこと。だから。

「…今度は。今度はちゃんと、貴方のことを守りますから。

もう二度と、こんなことにはならないように…」

今は、その現実を受け入れる。眠り続ける彼女の側にできるだけ長いこと居てやっ

て、起きたら一番に迎えに行く。

それが、私のできることの精一杯だ。

それ以上は、今は、昔は何もできない。

そっと金色の髪に触れる。優しく、その頭を撫でてやった。

彼女は常に帽子を被っているので、撫でられることにあまり慣れていない。だからよ

く覚えている。

「…きっと、目を覚ましていたら。」

貴方は、笑ってくれたのでしょう。

その言葉は、誰に届くこともなく、部屋の静寂の中へと消えた。

 


「そういえば、今日早苗さんが料理当番だったのですが。」

毎日彼女の元へやってきては自分の近くで起きた雑談を彼女にしてやった。雑談をしているときの彼女の顔色は何となく良く見える。安心しているのかもしれない。

周りから見たら独り言のようにしか聞こえないのだろうが、どうせこの部屋には私と穣子しか居ない。

「創作料理に手を出してて、唐揚げが出てきたのですよ。それは別に良かったのですが…」

いつも何気ない会話をして、身近な人の名前を出して。今日は何の話をしてやろうだとか、毎日考えて。

時々手みやげに花を持ってきて、花瓶に挿してやったりもする。枯れかかると誰か(多分早苗だろう)が破棄してくれている。

それはある意味助かった。私がここに来ているのはいつもお昼頃から夕方、日が沈む頃まで。どうしても花は私の居ないときに花びらが散り始める。

自分の居ない頃合いに。少しだけ、彼女が私の居ない間に目を覚ましてしまったら、と考えてしまう。

が、すぐにそれを否定した。目を覚ましてくれる、それ以上に嬉しいことは無いから。

「なんと、中身が蛙だと仰るのですよね。気持ち悪いうんぬんもありますが、その前に貴方の信仰している神は何だって話ですよね。」

因みにその唐揚げ自体はとても美味しかった。料理上手ということを認識させられるのには充分だった。

「……」

…その様子だと、中身を聞いた瞬間早苗に殴りかかりに行ったんだろうね。なんてものを食わせるんだって。

…と、起きている彼女だったら返してくれるのだろう。

自分の話し方から、仕草から、彼女は私のことを全て見通してくる。隠し事なんて通用しない。周りには隠し通せたことでも、彼女だけには通用しなかった、なんてこともあった。

…いや、一つだけ彼女に気づいてもらえない感情があるのは確か。これは逆に、周りの皆が気が付いているのに、彼女だけ気が付いていないという特別な感情。

私が、彼女が好きだということ。

私は彼女が私のことをどのような好きでいるのかは分からない。好きの意味は幅が広すぎる。

友達としては近すぎて、親友としてはずれていて、恋人と言うには遠すぎる。

そんな変な位置に、私と穣子は居た。

手が届きそうなのだが届かない。姿が見えなさそうなのだがはっきり見える。

今はもう、彼女は遠い遠いところへ行ってしまったかのように錯覚してしまう。

二度と戻ってこないのではないか。

そう思ったことだって少なくはない。

「…話題が尽きてしまいましたね。」

時計を見つめる。すでに二時間ほど経っていた。日が傾くのにはまだ少し早い。

しかし、自分の好きな人と一緒に居ると時間が経つのが早い。眠っていたとしても、一緒に居ると幸せだと感じる不思議な力がある。

…これで目を覚ましてくれれば言うことは何も無いのだが。

話題が尽きると、私は何も言わずにっこりと微笑みかける。ここに居るから、そう伝えるために。

もしかしたらひきつった笑顔かもしれない。心から笑えて居ないかもしれない。どんな顔をしているのか、私も、彼女も分からない。

あまり酷い顔はしていないと思う。そんな顔をしていようものなら、穣子なら急いで目を覚まして私に声をかけてくれる。私を放っておいて一人眠りこけるなど、そんなこと許すはずがない。

…なんて、傲慢な考えだなと思う。それは私がそうしてほしいだけであって、穣子自身の意見を完全に無視している。都合のいい考え方にもほどがある。

それと同時に、本当に自分は穣子のことが好きなのだと再認識させられる。どうしようもなく惹かれて、恋い焦がれて。

困ったことに、彼女がどう思っているのかは全く分からなかった。

「…早く目を覚ましてくださいね。」

そう言って、彼女の頬を指でつつく。ぷにぷにして、柔らかかった。

幼い特有の肌。柔らかくて、死人にはとても真似できない。

眠っているだけで、死んではいない。しかし、眠り続けることは苦しいことではないのだろうか。目を覚ましたくてもできない、辛くて、もどかしい。

…私なら、それなら殺してくれと言いたくなる。

最も、彼女の意見を無視した自分勝手な思いでしかないが。

「…また明日も来ますね。」

もう一度、人差し指でその柔らかい肌をつつく。

笑っているような気がした。

 

 

 

 

 

 

 

本編では病院で、ということになっていますが、宿でということにしています。

そして一回目でやるような内容じゃな